盗む前に発見されたら~窃盗の実行の着手~

2020-05-21

盗む前に発見され、窃盗の実行の着手が認められる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

Aさんは、深夜、金目の物を盗もうと思い、千葉市にある一軒家の施錠されていない風呂場の窓から中に侵入しました。
懐中電灯を照らしながら廊下を歩いていたところ、ちょうどトイレから出てきた住民に見つかり、何も盗らずにそのまま逃げだしました。
後日、千葉東警察署は、Aさんを被疑者として逮捕しました。
Aさんの家族は、Aさんと面会したいと申し出ましたが、「しばらくは会えない。」と言われ困っています。
(フィクションです。)

盗む前に発見された場合、どのような罪が成立するの?

金品を窃取する目的で人の住居等に侵入したものの、何も盗らずに逃げた場合には、どのような犯罪が成立するのでしょうか。
他人の住居等に侵入した行為については、住居侵入罪が成立すると考えられるでしょう。
しかし、他人の家に侵入する場合、何らかの目的があることが通常です。
侵入したのは家の中にある金品を盗むためであったが、その目的を遂げることなく逃亡した場合、窃盗罪についてはどのように考えることができるのでしょうか。

窃盗罪について

窃盗罪は、他人の財物を窃取した場合に成立する罪です。
窃盗罪の構成要件は、次の通りです。
①他人の占有する財物を
②不法領得の意思に基づいて
③窃取する。

窃盗罪の実行行為である「窃取」とは、他人が占有する財物を、占有者の意思に反して、自己または第三者の占有に移転させることをいいます。
行為者または第三者が財物の占有を取得したときに、窃盗は既遂(犯罪の実行に着手してこれを遂げ、犯罪を完成させること)となります。
既遂に対して「未遂」という概念もあり、犯罪の実行に着手したものの、結果が発生しなかった場合のことです。
窃盗でいえば、他人が占有する財物を、占有者の意思に反して、自己または第三者の占有に移転させようとしたが、目的物を自己または第三者の占有に移転するに至らなかった場合に、窃盗未遂となります。
それでは、窃盗目的で侵入したが、何も盗まずに逃亡した場合すべてにおいて窃盗未遂となるのでしょうか。

窃盗の実行の着手について

判例によれば、実行の着手の判断基準について、他人の財物の占有を侵害する具体的危険が発生する行為を行った時点で実行の着手が認められます。(最判昭23・4・17)
これについては、対象となる財物の大きさなどの形状、犯行日時、犯行場所の状況、犯行の具体的様態などの状況を総合して判断されます。
具体的には、次のように判断されることになります。

◇形状◇
財物が小さいなど持ち運びしやすい形状であれば、他人の財物の占有を侵害する危険性は高くなります。

◇日時◇
深夜など人がいない時間帯であれば、他人の財物を持ち出しやすくなり、他人の財物の占有を侵害する危険性は高くなります。

◇場所◇
財物しかない場所であれば、持ち出しやすくなり、財物を探さなければならない場所であれば、持ち出しにくくなります。
持ち出しやすくなる場合には、他人の財物の占有を侵害する危険性は高くなります。

◇態様◇
例えば、機械的に財物を取得できるような装置を仕掛けたときには、他人の財物の占有を侵害する危険性は高くなります。

これらの要素を総合的に判断するので、すべての要素を満たす必要はありません。

侵入盗の場合、侵入場所が一般住宅であれば、物色行為があった段階で実行の着手ありとなります。(最判昭23・4・17)
他方、土蔵や金庫室などに侵入した場合、侵入行為に着手した段階で実行の着手ありと判断されます。(名古屋高判昭25・11・14)

窃盗未遂罪は処罰されますが、予備にとどまる場合は処罰されません。
そのため、窃盗の実行の着手が認められるか否かは重要です。

実行の着手とは、犯罪の実行行為に着手することをいいます。
そして、犯罪の実行行為は、犯罪の結果を発生させる具体的危険性のある行為のことですから、犯罪の実行の着手は、犯罪の結果を発生させる具体的危険性のある行為を開始することと言えます。
ですので、窃盗のケースで言えば、他人の財物の占有を侵害する具体的危険が発生する行為を行った時点で、実行の着手が認められることになるのです。
ここでいう「具体的危険」とは、結果の発生する可能性が相当高い状況をいいます。

さて、事例について検討してみましょう。
Aさんは、深夜に(日時的要素)、無施錠の窓から被害者宅に侵入しています。
窃盗を行おうと思いAさんが侵入した場所は、一般住宅で、住居内は当然いろんな部屋があるので、どこに目的物が置いてあるのかを探さなければなりません。(場所的要素)
そのうえ、Aさんは懐中電灯で廊下を歩き、金目の物を探そうとしているときに発見されています。(態様的要素)
そのため、財物の占有を侵害する具体的危険性が発生したといえる物色行為には至っていないため、窃盗の実行の着手は認められず、住居侵入罪のみが成立する可能性があります。

窃盗の実行の着手の判断は、対象となる財物の形状、犯行日時、犯行場所の状況、犯行の具体的態様など様々な状況を総合してなされます。
窃盗目的で住居等に忍び込んだが、盗む前に気が付かれ、逃亡したケースでも、窃盗未遂が成立する場合とそうでない場合とがありますので、刑事事件に詳しい弁護士にご相談ください。

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