最初の執行猶予と再度の執行猶予

2021-11-10

最初の執行猶予と再度の執行猶予について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

Aさんは万引き(窃盗罪)での執行猶予期間中に再び万引きしたとして窃盗罪で逮捕されてしまいました。Aさんは再度の執行猶予を受けることはできないか弁護士に相談しました。
(フィクションです。)

~最初の執行猶予~

刑の執行猶予とは、有罪判決をして刑を言い渡すに当たって、情状により、その執行を一定期間猶予し、その期間を無事経過したときは刑の言渡しを失効させる制度のことをいいます。刑の執行猶予には、大きく分けて「刑の全部の執行猶予の制度」と「刑の一部の執行猶予の制度」の2種類があり、前者はさらに、「最初の執行猶予の制度」と「再度の執行猶予の制度」の2種類に分けられます。

最初の執行猶予(付き判決)を受けるための要件は,刑法25条1項に規定されています。

刑法25条1項
次に掲げる者が3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けたときは,情状により,裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間,その刑の全部の執行を猶予することができる

1号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2号 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても,その執行を終わった日又はその執行の免除を受けた日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者

つまり,最初の執行猶予(付き判決)を受けるには

① 3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けること
② 上記1号,あるいは2号に該当すること
③ (執行猶予付き判決を言い渡すのが相当と認められる)情状があること

が必要ということになります。

~再度の執行猶予~

再度の執行猶予とは、文字通り、再び執行猶予付き判決が下されることをいいます。
再度の執行猶予は最初の執行猶予よりも認められる条件が厳しくなっており、

①前に禁錮以上の刑に処せられて執行猶予中の者であること
②1年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けること
③情状に特に酌量すべきものがあること
④最初の執行猶予判決に保護観察がつけられていないこと
 
となっています。

ただし、再度の執行猶予は認められづらいのが現状です。
というのも、まず1年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受ける犯罪が多くないからです。
また、仮に1年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受けたとしても、情状事情が特に斟酌されるものでならず、その判断は相当厳格に行われることになります。
しかし、端から諦めてしまうのではなく、まずは刑事事件に強い弁護士に相談することをお勧めします。
万引きでは被害弁償、示談はもちろん、窃盗症を専門とする治療機関に継続的に通院する、家族などの指導・監督を受けるなどして更生可能性、再犯可能性を裁判官にアピールできれば再度の執行猶予獲得を獲得する可能性を高めることは可能です。

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