【事例解説】窃盗犯を脅して金を受け取った事例(中編)

2025-09-21

窃盗犯を脅して金を受け取った事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。


【事例】

愛知県内に住むAさんは、友人Bさんから宝石店で窃盗をした話を聞かされました
後日Aさんは、「盗んだ金品の一部をよこさなければ、犯行を警察に言うぞ」とBさんを脅し、Bさんが盗んだ総額100万のうちの20万円程度に相当する金銭を受け取りました
後日、Bさんは警察により逮捕され、Aさんは事件関係者として警察に呼ばれるに至りました。
そこでAさんは弁護士に今後の対応を相談することにしました
(フィクションです)

【今回の事例で成立しうる犯罪(続き)】

②Aさんに成立する犯罪
また、Bさんを脅し、30万円程度の金品を交付させた行為について恐喝罪が成立することが考えられます。
恐喝罪とは、「人を恐喝して財物を交付させ」る犯罪で、刑法249条により刑罰として「十年以下の懲役」が定められています。
今回の事例で問題となるのは、以下の2点です。
Bさんに交付させた金品は盗品の一部であるため「財物」にあたるか
Bさんが交付した金品は盗品の一部であるため、Bさんに「財産上の損害」がないのではないか
「Bさんの犯行を警察に言う」と言って脅した行為が「恐喝」にあたるか、Bさんに交付させた金品は盗品の一部であるため「財物」にあたるのでしょうか
この点について、恐喝罪の保護法益は、占有(他社の支配を排除し物を事実上支配すること)にあり、これは、窃盗犯人の盗品に対する占有をも含むと解されます。
そのため、BさんがAさんに交付した30万円相当の金品は「財物」にあたります。

Bさんが交付した金品は盗品の一部であるため、Bさんに「財産上の損害がないのではないでしょうか
この点につき、恐喝罪が認められるためには、「財産上の損害が必要と解されています。しかし、Bさんに交付した金品は盗品であるため、Bさんにとって不法原因給付物(民法708条本文)にあたり、財産上の損害がないとも思われます。しかし、恐喝がなければ、Aさんに金品を交付することはなかったといえますから、Bさんには財産上の損害があったと認められます

犯行を警察に言う」と言ってBさんを脅した行為が「恐喝」にあたるのでしょうか
すなわち、Aさんの上記発言自体は適法行為の告知であるため「恐喝」にあたらないのではないかということです。
この点につき、「恐喝」とは財物の交付に向けて行われる脅迫または暴行のことをいいます。さらにここにおける「脅迫」とは、人を畏怖させる程度の害悪の告知をいい、適法行為の告知であっても人を畏怖させることは可能であるため、Aさんの上記発言は、「脅迫」にあたります。そしてこの「脅迫」はBさんの財物の交付に向けて行われていますから「恐喝」にあたります。

以上より、恐喝罪が成立することになります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
窃盗事件を起こしてしまい取調べを受けることになってしまった方、ご家族様が逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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