(事例紹介)遺体発見の住宅からおよそ600万円を盗んだとして警察官が逮捕①

2023-06-07

【事例】     

 

警視庁三鷹警察署の警察官が110番通報でかけつけた住宅から現金およそ600万円を盗んだとして、警視庁に逮捕されました。
窃盗邸宅侵入の疑いで逮捕されたのは、警視庁三鷹署の地域課に勤務する巡査長で、三鷹市の住宅に侵入し、現金およそ600万円を盗んだ疑いがもたれています。
警視庁によりますと、この住宅には60代の男性が1人で暮らしていましたが、親族が訪問した際に死亡しているのが見つかり、110番通報をして容疑者を含む複数の警察官が現場にかけつけたということです。
その後、親族が元々あったとみられる1000万円以上の現金が少なくなっていることに気づき、事件が発覚しました。
容疑者は容疑を認めているということで、警視庁は「言語道断の行為で今後は捜査を尽くし厳正に対処して参りたい」としています。

(5月27日配信のTBS NEWS DIGの記事を引用しています。なお、氏名等は当事務所の判断で伏せています。)

 


【解説】     

死亡している家主の家から現金を窃盗
警察官の男は、110番通報により、かけつけた先の住宅から現金およそ6600万円を盗んだ疑いが持たれています。
今回の事件では、警察官がかけつけた時点で現金の持ち主である家主が既に死亡している状況であったため窃盗罪との関係では、現金に家主の男性の「占有」が及んでいたか、いわゆる「死者の占有」という論点が問題になります。


【窃盗罪における死者の占有について】

窃盗罪は、他人の財物を窃取した場合に成立します。
他人の財物」は、「窃取」の対象となる物です。
窃取」は、他人が占有する財物を占有者の意思に反して自己又は第三者の占有に移転させることをいいます。
そのため「他人の財物」は、他人が占有している物である必要があります。
しかし、占有には占有の事実と占有意思が必要とされており、占有の意思のない死者には占有がないとされています
占有の及んでいない財物を盗んだ場合は、窃盗罪より法定刑が軽い占有離脱物横領罪が成立することになります。
そのため、今回のように死者の財物を盗んだ場合、窃盗罪ではなく遺失物横領が成立する可能性があります。

次回は、死者の占有についての判例を解説していきます。

 


【窃盗罪に強い弁護士】 

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