(事例紹介)「びんずる尊者像」を窃盗の疑いで男が逮捕①

2023-04-19

 事例 

5日午前、長野市の善光寺の本堂に置かれ、なでることで御利益があるとされている「びんずる尊者」の木像が盗まれ、およそ2時間半後に60キロほど離れた松本市内の車の中で見つかりました。
この事件では車を運転していた熊本県の男が盗みの疑いで逮捕され、6日、検察庁に送られました。
捜査関係者によりますと、容疑者は容疑を認めた上で、「びんずるに恨みがあった」という趣旨の供述をしているということです。
そして、木像について「どこかに埋めてやろうと思った」と供述していることが捜査関係者への取材でわかりました。
一方で、恨みを抱いた理由について「びんずるがいると地震や事件が起きる」などと一部、意味の通らない話もしているということです。
警察は売却する目的ではなかったとみていて、事件にいたるいきさつを詳しく調べることにしています。
(4月6日配信のNHK NEWS WEBの記事を引用しています。なお、氏名等は当事務所の判断で伏せています。)

「びんずる尊者」の窃盗事件 

「びんずる尊者」とは、長野市の善光寺の本堂に置かれている、なでると御利益があるとされている木像です。
ニュースでの情報では、男は善光寺の本堂に置かれてあった「びんずる尊者」を車に乗せて持ち去っていたようで、窃盗の疑いで警察に逮捕されています。
窃盗罪の実行行為は、他人の財物を「窃取」することです。

「窃取」とは、他人の占有する財物を、占有者の意思に反して自己又は第三者の占有に移転させることをいいます。
「びんずる尊者」を車に乗せて運び出すことは「びんずる尊者」の占有者である善光寺の意思に反して占有を自己に移転させる行為といえるため「窃取」したといえるでしょう。
しかし、男は警察の調べに対し、盗みの目的として「どこかに埋めてやろうと思った」などと供述しているようです。
窃盗罪の成立には、犯罪事実の認識・認容である故意の他に「不法領得の意思」も必要となります。
以上のような男の発言は、窃盗罪の成立要件である「不法領得の意思」に関して疑問を生じさせるものであるため、窃盗罪が成立しない可能性もあります。
不法領得の意思については、次回解説していきます。

 窃盗罪に強い弁護士 

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