窃盗事件:資源ごみの持ち去り
資源ごみの持ち去り行為について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
Aさんは、神奈川県相模原市内に設置されている資源ごみ回収ボックスから古新聞紙などを勝手に持ち去り、業者に販売する行為を繰り返していました。
知らない人間が資源ごみ回収ボックスから持ち去っているのを見かけた地域の住民が、自治会に相談し、自治会は神奈川県相模原南警察署に通報しました。
後日、Aさんがいつものように資源ごみ回収ボックスから資源ごみを持ち去ろうとしていたところ、神奈川県相模原南警察署の警察官に声を掛けられました。
Aさんは資源ごみの持ち去り行為が犯罪に当たるのか、今後どのように対応すべきか不安でなりません。
(フィクションです。)
資源ごみの持ち去りと窃盗罪
資源ごみが業者による買取の対象となることがあるため、資源ごみの集積所からの資源ごみを勝手に持ち去るという行為が行われています。
資源ごみの持ち去りは、自治体にとっても経済的損失となるため、条例で資源ごみの持ち去りを禁止しているところもあります。
それでは、そのような資源ごみの持ち去り行為が、窃盗罪となる可能性はあるのでしょうか。
窃盗罪について
窃盗罪の構成要件は、次のとおりです。
①他人の財物を
②不法領得の意思をもって
③窃取したこと
①他人の財物
「他人の財物」とは、他人の占有する他人の財物のことです。
「財物」は、有体物を指しますが、管理可能な限り無体物も財物にあたると解されています。
また、窃盗罪は、個人の財産権を保護するために設けられている以上、窃盗罪の客体となる「財物」には財産的価値がなければなりません。
通常、財産的価値があるものは、金銭的経済的価値があると言えますが、金銭的経済的価値のない思い出の品のような場合、つまり、主観的感情的価値でも社会通念上刑法的保護に値するものであれば財物となります。
しかしながら、メモ用紙1枚、ちり紙13枚といった金銭的経済的価値が極めて軽微な物は刑法的保護に値せず、財物には当たりません。
ここで資源ごみが「財物」に当たるのか否かについて考えてみると、資源ごみは回収業者が買い取りの対象となるものが多く、一定の金銭的経済的価値があると言えるため、ごみと雖も「財物」に当たると判断される可能性はあるでしょう。
次に、「占有」の概念についてですが、「占有」とは、人が財物を事実上支配し、管理する状態をいいます。
この「占有」は、「占有の事実」と「占有の意思」で構成される概念です。
「占有の事実」とは、占有者が財物を事実上支配している状態のことをいいます。
物を客観的に支配している場合だけではなく、物の支配を取り戻そうと思えばいつでも取り戻せる状態も「占有の事実」に含まれます。
また、「占有の意思」とは、財物を事実上支配する意欲または意思のことです。
集積場に出されている資源ごみについての「占有」について考えてみましょう。
通常、資源ごみを出した人は、当該ごみを「手放す」「捨てる」といった意思のもと集積場に出しているわけですから、ごみを出した人が資源ごみを「占有」しているとは言えません。
それでは、集積場に出されている資源ごみは誰のものでもない(=無主物)なのでしょうか。
資源ごみが自治体の収入源となっていることもあり、自治体によっては条例で集積場に出されている資源ごみの持ち去りを禁止しています。
さらに、その条例で明確に集積場に出された資源ごみの所有権が自治体にあると定めている場合もあります。
そのような場合、集積場に出された資源ごみは自治体が所有していることになり、当該資源ごみは「他人の財物」に該当することになります。
持ち去った資源ごみが「他人の財物」に当たる場合、かつ、権利者を排除し他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従いこれを利用・処分する意思(=不法領得の意思)に基づいて、占有者の石に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己または第三者の占有に写した(=窃取)場合には、窃盗罪の構成要件に該当することになります。
ただし、自治体の条例で資源ごみの持ち去りが禁止されており、違反について罰則が科されている場合には、条例違反で検挙される可能性もあります。
事案によっては成立する犯罪が異なりますので、刑事事件で検挙されてお困りであれば、刑事事件に強い弁護士に相談されるのがよいでしょう。
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