窃盗事件で執行猶予
執行猶予について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
埼玉県上尾警察署は、埼玉県上尾市の事務所に侵入し、現金や電気製品などを盗んだとして、県内に住むAさんを建造物侵入と窃盗の容疑で逮捕しました。
Aさんは他にも何件か同様の手口で侵入盗を行っており、刑務所に入ることになるのではないかと、AさんもAさんの家族も不安で仕方ありません。
(フィクションです。)
Aさんは、事務所に侵入して保管されていた現金や電気製品など転売できそうな物を持ち去りました。
捜査機関に事件が発覚すれば、捜査が開始されます。
捜査機関は、犯人と思われる者(「被疑者」と呼びます。)を特定・発見し、必要があればその身柄を確保した上で、証拠の収集・保全します。
捜査を遂げた結果、検察官は当該被疑者について起訴するか否かを判断します。
検察官が起訴した場合には、裁判官が犯人と思われる者(起訴後は、「被告人」と呼びます。)が起訴状に書かれている罪を犯したことに間違いがないかどうかを判断します。
裁判官が、被告人の有罪とする場合には、科すべき刑を言い渡します。
刑には、死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料、没収とがあります。
生命の剥奪を内容とする刑罰を死刑といい、拘禁によって犯罪者の自由の剥奪を内容とする刑罰が懲役、禁錮、拘留で、一定額の金銭の徴収を内容とする刑罰が罰金及び科料です。
没収は、犯罪に関係のある特定の物の所有権を所有者から剥奪して国庫に帰属させる刑罰です。
Aさんは、建造物侵入と窃盗の罪に問われています。
建造物侵入罪に当たる行為は、窃盗を実現するため、窃盗の手段として行われているため、建造物侵入罪と窃盗罪の関係は、牽連犯となります。
そのため、Aさんは、2つの罪のうち最も重い刑を定めている罪の法定刑によって処断されます。
建造物侵入罪の法定刑は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金です。
一方、窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金であり、建造物侵入罪の法定刑よりも重いため、こちらの法定刑によって処断することになります。
裁判官がAさんについて有罪とすれば、「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」の範囲内でAさんに科すべき刑を決めることになります。
つまり、懲役か罰金かいずれかの刑が科されることになります。
罰金は決められた金額を納めることで刑に服したことになります。
しかし、罰金を完納することができない場合は、1日以上2年以下の期間、労役場に留置されることがあります。
懲役刑は、刑事施設に拘置して所定の作業を行わせるものです。
決められた期間、刑務所に入ることで刑に服します。
有罪判決を受けたら必ず刑務所に入らなければならないのかと不安に思われる方も少なくないのですが、懲役刑(又は禁錮刑)が言い渡された場合であっても、刑の全部の執行猶予が付された場合は、直ちに刑務所に入るということにはなりません。
執行猶予とは
刑の執行猶予とは、刑を言い渡すにあたって、犯情により一定の期間その執行を猶予し、猶予期間を無事に経過したときは、刑罰権の消滅を認める制度のことです。
刑の執行猶予には、刑の全部執行猶予と刑の一部執行猶予の2種類がありますが、ここでは前者について説明します。
刑の全部の執行が猶予されると、懲役刑が言い渡されたとしても直ぐに刑務所に入ることはありません。
猶予期間中何事もなく過ごすことができれば、判決で言い渡された刑の効力はなくなります。
そのため、執行猶予が付くかつかないかで、その後の生活が大きく変わってくることになります。
刑の全部の執行猶予となるためには、以下のような要件があります。
【初犯の場合】
①(a)前に禁錮以上の刑の処されたことがないこと、又は、(b)前に禁固以上の刑に処されたことがあっても、その執行を終わらせた日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁固以上の刑に処せられたことがないこと。
②3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しをする場合であること。
③執行猶予を相当とするに足りる情状があること。
【再度の場合】
①前に禁固以上の刑に処され、その執行の猶予中であること。
②1年以下の懲役又は禁錮の言渡しをする場合であること。
③情状が特に酌量すべきものであること。
以上の条件を満たしていることが刑の全部の執行猶予の前提となります。
窃盗事件では、初犯であれば、被害額や犯行態様の悪質性、被害弁償の有無などが考慮されて執行猶予となる可能性があります。
窃盗事件を起こし、実刑となるのではとお悩みであれば、一度弁護士に相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、窃盗事件をはじめとする刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
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