(事例紹介)置いてあった財布を置引き~窃盗罪と遺失物横領罪②~

2023-03-30

事例

大阪府曽根崎警察署は、大阪市内の公園で財布を置き引きしたとして、窃盗罪の疑いで会社員の男を逮捕しました。
男は、会社の昼休みに弁当を食べるため公園に入ったところ、ベンチに財布が忘れてあるのを発見し、これを持ち去っていました。
財布は、母子で公園に遊びに来ていた母親の物で、一時的に公園内のトイレに行こうとしてベンチに財布を置き忘れていました。
母親が、トイレに向かい3分ほどで財布をベンチに忘れたことに気づいて戻った時には財布がなくなっていたため警察に相談したところ、男の犯行であることが防犯カメラの映像などから明らかになり今回の逮捕に至りました。
(フィクションです。)

窃盗罪と遺失物等横領罪を区別する占有について
窃盗罪遺失物等横領罪を区別するのは、持ち去った物に他人の占有が及んでいるか否かになります。
占有」とは、財物に対する事実的な支配をいいます。
これは、財物に対する占有の事実と占有意思を総合して、社会通念に従って判断されます。
判断要素としては、財物自体の特性、被害者と財物との時間的場所的近接性、忘れた場所の開放性、置き忘れた場所の見通し状況、被害者の認識等が考慮に入れられます。
 
実際に、参考事例で考えてみます。
今回の財物は、財布であるため、大きさは小さく、重さも軽量であり、移動も容易な物といえます。
また、置き忘れた場所は、公衆が自由に出入りできる公園のベンチであったことから場所の開放性は高いです。
これらの事情は、財布に対する占有を否定するような事情といえます。
しかし、母親はトイレに向かった後に、ベンチに財布を忘れたことに気づいており、被害品の場所を明確に記憶していたといえます。
しかも、トイレは公園内にある近い距離であったことから、被害者である母親と財物たる財布との場所的近接性は高かったといえるでしょう。
さらに、母親が財布を忘れたことに気づいたのは、トイレに、向かって3分ほどであり、時間的近接性も高いといえるでしょう。
これらの事情は、財布に対する占有を肯定するような事情といえます。
以上を、総合的に考慮すると、母親の財布に対する現実的支配は直ちに容易に回復できる状態にあったといえ、母親の財布に対する占有は肯定される可能性が高いでしょう。

占有についての判例の判断

最高裁平成16年8月25日の判例では、参考事例と同じような事案で、被害者の財物への占有を認め窃盗罪が成立するとしています。
事案としては、被害者がポシェットを横に置いて公園のベンチに座っていましたが、これを忘れて駅の改札口まで歩いたところで忘れたことに気づき公園に戻りましたが、既にポシェットは、なくなっていたという事案でした。
これにつき、最高裁は、被告人が本件ポシェットを領得したのは、被害者がこれを置き忘れてベンチから27mしか離れていない場所までいった時点であることを重要な根拠とし、被害者の本件ポシェットに対する占有はなお失われてはいなかったとして、窃盗罪の成立を認めています。
一方で、東京高平成3年4月1日の判例は、大型スーパーの6階のベンチに財布を置き忘れて、地階1階に移動したところで、忘れ物に気づいて引き返したという事案でした。これにつき、東京高裁は、被害者と財布の所在する階層が異なることを重要な根拠として、Aの占有を否定しています。

このように、占有の有無は、犯行時の実際の現場の状況などによって異なるものであるため、法律の専門家である弁護士のサポートを受けながら自己の主張を明らかにしていく必要があります。

窃盗罪・遺失物等横領罪に強い弁護士

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