【事例解説】看護師の女が病院の更衣室での窃盗行為で逮捕
看護師の女が病院の更衣室で窃盗をした事例を参考に、看護師免許の相対的欠格事由について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
X病院で働く看護師のAさんは、看護師が利用している更衣室内の机の上に置かれている財布の中から現金数千円を繰り返し盗んでいました。
被害に気づいた数人の看護師が、被害を申告し、最終的には警察に被害届を提出しました。
警察の捜査で、財布についた指紋や防犯カメラの映像などからAさんの犯行が疑われ、Aさんは逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)
看護師免許の相対的欠格事由について
保健師助産師看護師法の7条3項では、「看護師になろうとする者は、看護師国家試験に合格し、厚生労働大臣の免許を受けなければならない。」と定められています。
そして、同法9条では、相対的欠格事由として免許を与えないという判断ができる事由を定めています。
9条 次の各号のいずれかに該当する者には、前二条の規定による免許(以下「免許」という。)を与えないことがある。
一 罰金以上の刑に処せられた者
二 前号に該当する者を除くほか、保健師、助産師、看護師又は准看護師の業務に関し犯罪又は不正の行為があつた者
三 心身の障害により保健師、助産師、看護師又は准看護師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
四 麻薬、大麻又はあへんの中毒者
これから、看護師になろうとする者が、9条の各号のいずれかに該当する行為をした場合、相対的欠格事由として看護師免許が与えられない可能性があります。
また、現在看護師免許を与えられている者が、9条各号のいずれかに該当する行為をしたときは、戒告、3年以内の業務の停止、免許の取消しの処分を受ける可能性があります(同法14条1項から3項)。
窃盗事件での看護師免許への影響
他人の財物を窃取する行為は、刑法235条に定められている「窃盗罪」に問われることになります。
窃盗罪で有罪判決を受けると、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金になります。
看護師免許は、罰金以上の刑が相対的欠格事由となっているため、たとえ数万円の罰金刑であっても看護師免許に影響を及ぼす可能性が生じてしまいます。
看護師資格に影響を及ぼすことを避けるためには、不起訴を勝ち取ることが不可欠になります。
窃盗罪のような被害者がいる犯罪については、不起訴の可能性を少しでも上げるためには、被害者との示談締結が重要な活動になります。
被疑者本人が逮捕・勾留されている状況では自身での示談交渉は不可能ですし、気付いたら起訴されてしまい、不起訴を目指すことが手遅れになってしまったということも考えられます。
もし、刑罰を受けることにより失う可能性のある資格をお持ちのご家族やご友人が逮捕されてしまった場合は、弁護士に初回接見にいってもらい今後の流れや、すべき活動について一度アドバイスをもらうことをお勧めします。