【事例解説】窃盗に入った犯人を見逃した事例③

2024-09-28

窃盗に入った犯人を見逃した事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【事例】

愛知県内に住むAさんは、雑居ビルの夜間警備のアルバイトをしていました。
そうしたところ、夜間の見回り中に、知り合いのBさんがビル内のテナントから金品を盗みだしているところを発見しましたが、知り合いということもあり、その場では見逃すことにしました。
しかし、後日Aさんは気が変わり、「盗んだ金品の一部をよこさなければ、犯行を警察に言うぞ」とBさんを脅し、Bさんが盗んだ金品総額100万のうちの30万円程度に相当する金品を受け取りました
後日、Bさんは警察により逮捕され、Aさんは事件関係者として警察に呼ばれるに至りました。
そこでAさんは弁護士に今後の対応を相談することにしました。
(フィクションです)

【今回の事例で成立しうる犯罪】

Aさんに成立する可能性のある犯罪の続きを解説していきます。 

また、Bさんを脅し、30万円程度の金品を交付させた行為について恐喝罪が成立することが考えられます。
恐喝罪とは、「人を恐喝して財物を交付させ」る犯罪で、刑法249条(出典/e-GOV法令検索)により刑罰として「十年以下の懲役」が定められています。
今回の事例で問題となるのは、以下の3点です。
Bさんに交付させた金品は盗品の一部であるため「財物」にあたるか
Bさんが交付した金品は盗品の一部であるため、Bさんに「財産上の損害」がないのではないか
「Bさんの犯行を警察に言う」と言って脅した行為が「恐喝」にあたるか

Bさんに交付させた金品は盗品の一部であるため「財物」にあたるのでしょうか
この点について、恐喝罪の保護法益は、占有(他社の支配を排除し物を事実上支配すること)にあり、これは、窃盗犯人の盗品に対する占有をも含むと解されます。そのため、BさんがAさんに交付した30万円相当の金品は「財物」にあたります。

Bさんが交付した金品は盗品の一部であるため、Bさんに「財産上の損害」がないのではないでしょうか
この点につき、恐喝罪が認められるためには、「財産上の損害」が必要と解されています。しかし、Bさんに交付した金品は盗品であるため、Bさんにとって不法原因給付物(民法708条本文)にあたり、財産上の損害がないとも思われます。しかし、恐喝がなければ、Aさんに金品を交付することはなかったといえますから、Bさんには財産上の損害があったと認められます

犯行を警察に言う」と言ってBさんを脅した行為が「恐喝」にあたるのでしょうか
すなわち、Aさんの上記発言自体は適法行為の告知であるため「恐喝」にあたらないのではないかということです。
この点につき、「恐喝」とは財物の交付に向けて行われる脅迫または暴行のことをいいます。さらにここにおける「脅迫」とは、人を畏怖させる程度の害悪の告知をいい、適法行為の告知であっても人を畏怖させることは可能であるため、Aさんの上記発言は、「脅迫」にあたります。そしてこの「脅迫」はBさんの財物の交付に向けて行われていますから「恐喝」にあたります

以上より、恐喝罪が成立することになります。

また、Aさんには盗品等無償譲受罪が成立することが考えられます。
盗品等無償譲受罪は刑法256条1項に定められており、「盗品その他財産に対する罪に当たる行為によって領得された物を無償で譲り受け」る犯罪であり、法定刑として「三年以下の懲役」が定められています。
この点について、「譲り受け」が恐喝による取得の場合でも成立するかが問題となりますが、Bさんについて、瑕疵はあるものの自己の意思に従い財物をAさんに交付していますから、「譲り受け」に該当することとなります。

以上より、Aさんには、窃盗罪の幇助犯恐喝罪盗品等無償譲受罪が成立すると考えられます。

 

【窃盗事件を起こしてしまったら】

今回の事例では、まだAさんに関しては事件化していませんが、事件化するリスクが高いため、いち早く弁護士に相談して、対策を講じることをおすすめします。
具体的には、自首やBさんとの示談等を検討することになるでしょう。
刑事処分の軽減のためには、迅速かつ適切な弁護活動が不可欠ですので、お困りの場合は速やかに刑事事件に強い弁護士にご相談ください

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