【事例解説】窃盗目的で侵入した店舗で警備員と争いに(前編)

2024-10-19

窃盗目的で侵入した店舗内において、警備員が死んでしまった事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

盗難犯

【事例】

愛知県内に住むAさんは、窃盗目的で、深夜、閉店後の商業施設に侵入しました。
店内を物色していたところ、夜間の見回りにあたっていた警備員Bさんに発見され、取り押さえられそうになったため、AさんはBさんに対して暴行を行い、拘束したうえで、店内の物品を自家用車に積むために運び出しました
そうしたところ、運び出そうとした物品の一部が棚から落ち、Bさんはそれによって頭部を強く打ち付けられ、その結果、数時間後に死亡しました。
(フィクションです)

【今回の事例で成立する可能性のある犯罪】

今回の事例では、Aさんにはどのような犯罪が成立するでしょうか。

①建造物侵入罪

まず、Aさんが商業施設に侵入した行為には建造物侵入罪が成立すると考えられます。
建造物侵入罪とは刑法130条前段(出典/e-GOV法令検索)に規定されている、正当な理由なく他人の住居に侵入した際に成立する犯罪で、その刑罰として「年以下の懲役又は10万円以下の罰金」が定められています。
ここでの「侵入」とは建造物を管理する者の意思に反する立ち入り行為と考えられています。
今回の事例では、商業施設の管理権者は、営業時間外における窃盗目的での侵入を許すはずがありませんから、当然ながらAさんが窃盗目的で商業施設に侵入した行為は刑法130条の定める「侵入」に該当することになります。

②窃盗未遂罪

次に、Aさんが店内の物品を物色した行為につき、窃盗未遂罪が成立すると考えられます。
窃盗罪とは、刑法235条(出典/e-GOV法令検索)により「他人の財物を窃取する罪であると定められており、その法定刑として「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金刑」が定められています。
また刑法243条は、窃盗罪の未遂について定めており、未遂の場合は、刑法43条によって「刑を減軽することができる」とされています。
今回の事例では、Aさんは店内の物品を物色しているため、窃盗行為の着手があったと評価できますが、その後、AさんはBさんに発見されたため、Bさんに対して暴行を行っています。それゆえに、Aさんの物色した行為については、他人の財物を窃取したという結果は発生していません
そのためAさんには窃盗未遂罪が成立すると考えられます。

③強盗罪

次に、AさんがBさんに対して暴行・拘束を行ったうえで、物品を店外に運び出した行為につき、強盗罪が成立すると考えられます。
強盗罪とは、刑法236条(出典/e-GOV法令検索)により「暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取」する罪であると定められており、その法定刑として「五年以上の有期懲役」が定められています。

強盗罪が成立するためには以下の3点を満たす必要があります。
①「暴行」(=他人の反抗を抑圧する程度の暴行)があったこと
②「暴行」が財物奪取に向けられたもの
③「強取」したこと

今回の事例では、AさんはBさんに対して暴行と拘束を行っていますが、これは「Bさんの犯行を抑圧する程度の暴行であると評価できます。(①充足)
また、その暴行後に、物品の運び出しを行っているため、上記暴行は財物奪取に向けられたものと評価できます。(②充足)
それゆえに、Aさんの物品を運び出した行為は、暴行をもって、Bさんの反抗を抑圧し、その結果として財物を自己の占有に移す行為であるため、「強取にあたるといえます。(③充足)
以上よりAさんには強盗罪が成立することになります。

次回は、Aさんに成立し得る犯罪の続きを解説します…

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