他人名義のキャッシュカードでATMから現金を引き出す(前編)
他人名義のキャッシュカードを用いて不正にATMから現金を引き出した事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事例】
愛知県内の大学生Aさんは、SNS上で「短時間で稼げるバイト、ホワイト案件!」というウェブ広告を見かけ、それに応募しました。
その結果、岐阜県内の高齢女性の名義のキャッシュカードを使用して、コンビニエンスストアのATMから現金400万円を盗んだ容疑、いわゆる特殊詐欺事件における「出し子」の容疑で逮捕されました。
Aさんの両親は、突如Aさんと連絡が取れなくなったことを不安に思い、警察に相談に行ったところ、「詳細は言えないがAさんは現在逮捕されている」と知らされました。
そこで、Aさんの両親は、事件の詳細を知るべく、弁護士に初回接見を依頼しました。
(フィクションです)
【出し子行為とは】
出し子とは、今回の事例のような特殊詐欺犯罪において、被害者からだまし取ったキャッシュカードなどから金銭を引き出す役割のことをいいます。
受け子とは、だまされた高齢者からお金やキャッシュカードを受け取る役割のことをいいます。
両者の違いとしては、被害者と直接接触があるかどうかという点が挙げられ、この点は問われうる罪を左右しかねないため非常に重要であるといえます。
【出し子行為は何罪に?】
今回の事案は特殊詐欺事件における、騙し取ったキャッシュカードを用いて金銭を不正に引き出すいわゆる「出し子」について焦点が当てられています。
この点について、今回の出し子行為単体は窃盗罪にあたると考えられます。なぜなら刑法246条より詐欺罪とは「人を欺いて財物を交付させ」る罪であるとされるところ、ATMから金銭を引き出す出し子行為はこの定義に当たらないためです。よって出し子行為自体は、刑法235条に定められる窃盗罪に問われることとなるでしょう。
しかし、今回の特殊詐欺事件の首謀者との共謀があったと認定された場合には、刑法60条に定められる共同正犯の規定が適用され、詐欺罪についての罪責も負うことになるでしょう。実務上、共謀についての認定は、様々な要素が考慮されるため、共同正犯が成立すると断定はできないものの、仮に詐欺罪の共同正犯が成立した場合、詐欺罪に問われることになるため、窃盗罪の法定刑の「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金刑」ではなく、詐欺罪の法定刑の「10年以下の懲役」と重い刑罰が科される可能性があります。
そのため、弁護士に相談し、適切な対応を取ることが望ましいでしょう。