強盗事件を起こし緊急逮捕(後編)
今回は、刑事手続きとしての「逮捕」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
事例
Aさんは、大阪市内にあるコンビニエンスストアで刃物をチラつかせて脅迫し、現金15万円を強取して逃走しました。
警察官は直ちにAさんの検索を開始し、犯行時刻から2時間後、犯行場所から60キロメートル離れた場所においてAさんを発見したので、職務質問をしました。
Aさんは自動車に乗っており、今にも逃走しそうな様子でしたが、説得の後、車内検索を行い、車内から現金15万円、及び犯行に使われた刃物等が発見されました。
Aさんは強盗の疑いで緊急逮捕されることになりました。
(事例はフィクションです。)
緊急逮捕について
事例のAさんは、「緊急逮捕」をされています(刑事訴訟法210条)
手配された犯人の容貌とAさんの容貌が類似していること、Aさんの車内から強取された現金、犯行に用いられた凶器等が発見されたことから、①を満たしていると判断されたのでしょう。
また、Aさんは自動車に乗っており、今にも逃走しそうな様子だったので、②も充足していると判断されたものと思われます。
また、強盗事件の長期は20年ですから、③も満たします。
上記の判断により、警察官らは緊急逮捕に踏み切ったのでしょう。
緊急逮捕するその時には、令状は不要ですが、逮捕後、「直ちに」緊急逮捕状を請求しなければなりません。
緊急逮捕状が発付されないときは、直ちに被疑者を釈放しなければなりません。
現行犯逮捕
現に罪を行い、また行い終わった者を現行犯人といいますが、この現行犯人は、何人でも、逮捕状なくして逮捕することができます。
「何人でも」逮捕可能ですから、民間人であっても、現行犯逮捕することができます。
民間人による現行犯逮捕がなされたと扱われるケースはしばしば見受けられます。
緊急逮捕と異なり、逮捕後に逮捕状を請求する必要もありません。
現行犯は、嫌疑が明白な場合なので、裁判官による適法性のチェックを行わなくても、誤った逮捕のおそれが少ないので、令状が不要とされているのです。
また、犯人として追呼されている等の場合であり、罪を行い終わって間がないと明らかに認められる時は、「準現行犯」として、「現行犯人」とみなされることになります。
今後の弁護活動
Aさんが逮捕の手続の適法性について弁護士に尋ねたとしたら、概ね上記の様な説明をされるでしょう。
もちろん、緊急逮捕の要件を満たしていないのに逮捕されてしまったのであれば、即、釈放するよう求めて活動しなければなりません。
場合によっては、逮捕後に捜査機関が取得した証拠の証拠能力を否定できる場合もあります。
強盗事件を起こし逮捕されてしまった場合は、一刻も早く、弁護士を依頼することをおすすめします。