【事例解説】バス内に置き忘れられていた財布を持ち去って逮捕

2024-04-22

バス内に置き忘れられていた財布を持ち去って逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

 

 

【事例】

愛知県内の高校に教師として勤めるAさんは、退勤途中のバスの車内置き忘れられた財布を見つけました。周囲に持ち主らしき人がいなかったため、Aさんはこれを持ち帰りました
他方、財布の持ち主であるBさんはバスから降りて、自宅についてから財布をバス内に置き忘れたことに気づきました。そこで、Bさんはバス会社に問い合わせましたが財布が見つからなかったため、警察に被害届を出しました。その結果としてAさんは警察に逮捕されることとなりました。なお、実際にAさんが財布を盗んだのはBさんがバスから降車して30分後でした。
これを受けて、Aさんの家族は弁護士に初回接見を依頼しました。
(この事例はフィクションです)

【今回の事例で問われうる犯罪】

今回の事例では、占有離脱物横領罪窃盗罪のいずれかに問われうる可能性があります。

占有離脱物横領罪とは、刑法254条(出典/e-GOV法令検索)により「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領」する罪であると定められており、その法定刑として「一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料」が定められています。

他方、窃盗罪とは、刑法235条(出典/e-GOV法令検索)により「他人の財物を窃取」する罪であると定められており、その法定刑として「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金刑」が定められています。
以上のようにこれらの罪についての法定刑は、大きな隔たりがあるため、どちらの罪に問われるかは極めて重要な点となります。

この両罪を分けるのは、物に対する占有があったか否かです。
すなわち今回の事例では、Bさんがバスを降りた後も財布を占有していたと評価できるかどうかです。
Bさんの占有が肯定される場合、Aさんは「他人の財物を窃取」したことになるため窃盗罪に問われることになるでしょう。
他方、Bさんの占有が否定される場合、Aさんは「占有を離れた他人の物を横領」したことになるため占有離脱物横領罪に問われることになります。

刑法上の占有が認められるためには、客観的な要件としての財物に対する事実上の支配と、主観的な要件としての財物を支配する意思が必要であると考えてられています。
そしてそれらの事由を総合的に考慮して、占有の有無が判断されます。

今回の事例では、Bさんの主観面での財物を支配する意思は認められるため、客観面について、バスから降りて30分後の時点でBさんが財布を事実上支配していたか否かが争点となります。
事実上の支配についての認定は、様々な事情を総合的に考慮して判断されるため、必ず認定、ないしは否定されると明言することは難しいといえます。
この点について、5分程度の短時間かつ10数メートル程度の短い距離で、その物から離れた場合に占有を肯定した事例がありますが(参考事例:https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51567)、Bさんはバスから降車して30分と時間が経っており、かつ財布とBさんは物理的にもかなり離れていることから、占有離脱物横領罪に問われる可能性が高いといえるでしょう。

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またご家族、ご友人が警察に逮捕されてしまった方は、初回接見サービスをご利用ください。

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