【事例解説】バス車内での置き引き事件で捜査対象に(中編)
バス内に置き忘れられていた財布を持ち去って警察からの呼び出しを受けている事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事例】
愛知県内で自営業を営むAさんは、乗車していたバスの車内で置き忘れられた財布を見つけました。周囲に持ち主らしき人がいなかったため、Aさんはこれを持ち帰りました。
他方、財布の持ち主であるVさんはバスから降りて、自宅についてから財布をバス内に置き忘れたことに気づきました。そこで、Vさんはバス会社に問い合わせましたが財布が見つからなかったため、警察に被害届を出しました。
警察の捜査の結果、防犯カメラ等からAさんが怪しまれ、Aさんが捜査対象になっていましたが、まだAさんのもとに警察から連絡は来ていませんでした。
Aさんはなんてことをしてしまったんだと後悔の念に駆られ、弁護士に相談することにしました。
(この事例はフィクションです)
【事例の場合に自首が成立するか】
事例の場合では、目撃証言や防犯カメラの映像から既に犯人が特定されている可能性も否めません。
既に犯人が特定されている状態で警察に行って犯罪行為を打ち明けたとしても自首は成立せず、出頭扱いになるため想定と違った結末になることも考えられます。
しかし、自首が成立しなかったとしても自ら警察に出頭したことが評価されて逮捕されずに済むケースもあります。
ご自身の犯罪行為について、自首をするべきか否かについては、様々な状況を考慮にいれて判断する必要がある事柄になります。
刑事事件を専門としている弁護士は、こういった事例の経験が豊富ですので、適切なアドバイスやご自身が決断する上で重要な判断材料を貰うために、自首を検討されている場合は、弁護士に相談してみることをおすすめします。
【今回の事例で問われうる犯罪】
今回の事例では、占有離脱物横領罪か窃盗罪のいずれかに問われうる可能性があります。
占有離脱物横領罪とは、刑法254条により「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領」する罪であると定められており、その法定刑として「一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料」が定められています。
他方、窃盗罪とは、刑法235条により「他人の財物を窃取」する罪であると定められており、その法定刑として「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金刑」が定められています。
以上のようにこれらの罪についての法定刑は、大きな隔たりがあるため、どちらの罪に問われるかは極めて重要な点となります。
(次回に続く…)