ゴルフのロストボールで窃盗事件

2019-03-06

ゴルフのロストボールで窃盗事件

~ケース~
Aはゴルフが趣味であり,月に数回埼玉県加須市にゴルフにでかけていた。
ゴルフ場の売店では練習用としてロストボールの詰め合わせが販売されておりAも何度か購入していた。
しかし,Aはロストボールは誰のものでもないのだから商品として代金を支払わされることはおかしいと思うようになり,ラウンド中にロストボールと思われるゴルフボールを拾い,自分のキャリーバッグにしまうようになった。
落ちていたロストボールを自分のキャリーバッグにしまうところをキャディに注意されることがあったが,Aは気にせずにロストボールを持ち帰り続けていた。
ゴルフ場の支配人は埼玉県加須警察署に被害届を出し,Aは窃盗罪の疑いで埼玉県加須警察署で事情を聞かれることになった。
(フィクションです)

~ロストボールは誰の物か~

ゴルフ場のロストボールについてはプレイヤーがミスショットをしたまま立ち去り放置したものですからプレイヤーは所有権を放棄したものといえるでしょう。
そして誰の所有でもない物は一番最初に占有した人が所有権を取得します(民法239条)。
では,ロストボールとして放置されたゴルフボールは誰の物となるのでしょうか。

これについて裁判所は「無主物先占によるか権利の承継的な取得によるかは別として、いずれにせよゴルフ場側の所有に帰していた」と判断しています(最判昭和62年4月10日)。
つまり,林や池などを管理するゴルフ場がロストボールの占有を取得したか,プレイヤーからゴルフ場にロストボールを贈与しゴルフ場がこれに応じるというやりとりが暗黙の内にされていたかのいずれかによってロストボールの所有権はゴルフ場に移っていると認定したのです。
そのため,Aのロストボールを拾って持って帰る行為は窃盗罪にあたることになります。

~刑事事件~

窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
一口に窃盗罪と言っても被害金額や犯行態様など事案ごとに大きく異なります。

例えば,宝石店に忍び込み,1000万円相当の宝石を盗んだという場合には重大な窃盗事件として起訴され刑事裁判を経て実刑判決が出る可能性が高いです。
一方,スーパーマーケットで1000円程度万引きしたという事案であればわざわざ刑事裁判にするまでもないと感じるのではないでしょうか。

窃盗事件の場合,とられる手続きとして,微罪処分,起訴猶予,略式手続き,正式裁判の4種類が考えられます。
微罪処分とは,警察は事件を原則検察官に送致しなければなりませんが,事件が軽微であり,被害者が処罰を望んでいないなどといった場合に事件を警察段階で終了させることいいます。
起訴猶予とは,事件が検察官に送致されたが,被疑者の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないと判断された場合に出される不起訴処分です。
略式手続きとは裁判を行わず簡易な方法による刑事裁判の手続をいいます。
簡易裁判所の管轄する事件で100万円以下の罰金または科料を科すことができる事件で略式手続きをとることに被疑者に異議がない場合にとられます。
略式手続きであれば刑事裁判を行うよりも短い時間で事件が終局します。
窃盗事件の正式裁判は前科がある,常習性が高い,被害金額が多額,犯行態様が悪質,窃盗事実を否認しているなどといった場合に取られることが多いでしょう。

今回のケースでは情状にもよりますが,正式裁判となる可能性は低いでしょう。
紹介した事例は,ウェットスーツを持ち込み,ゴルフ場内の池から1300個以上ロストボールを盗んだという事案であり,窃盗でないと主張していたので正式裁判となったのでしょう。

ゴルフ場と和解し被害届を取り下げてもらえれば微罪処分となる可能性もあります。
また被害届を取り下げてもらえなかった場合,ゴルフ場にロストボール代の弁償等をし示談を成立させられれば不起訴処分となる可能性が高まります。
仮に,ゴルフ場が示談に応じてくれなくても,弁護士はそういった情状を検察官に説明し,起訴猶予とするように働きかけていきます。

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