兵庫県尼崎市の電気窃盗事件

2019-03-16

兵庫県尼崎市の電気窃盗事件

兵庫県尼崎市在住のAさん(大学3年生)は行きつけの飲食店Vのテーブル席でよく勉強していた。
その際,自身のスマートフォンをテーブル近くのコンセントを使って充電していた。
それに気づいた店長が,Aさんにコンセントを使うのは止めるように言った。
しかしAさんはその後も連日テーブル近くのコンセントを使用していたので,店長は兵庫県尼崎東警察署に被害届を提出した。
(フィクションです)

~窃盗罪~

窃盗罪は刑法235条で「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」と規定されています。
ここでいう財物とは有体物を指しており,実体を持たない権利などは窃盗罪の対象とはなりません。
電気も有体物ではないのでこの規定の対象外になるように思われます。
しかし,刑法245条において「この章(第36章 窃盗及び強盗の罪)の罪については、電気は、財物とみなす。」と規定されているので,電気も窃盗罪の対象となります。

明治時代の旧刑法では物ではない電気の窃盗が想定されおらず,電力会社に電気代を支払わずに勝手に電力を使用する行為が窃盗罪となるか議論されていました。
1903年に大審院(現代の最高裁判所)は電気にも窃盗罪が成立すると判示しました。
その後,1907年に施行された現刑法では245条で明確に電気には窃盗罪が成立すると規定されました。

~可罰的違法性~

刑法には可罰的違法性という考え方があります。
これは違法な行為であっても,刑事上の処罰を科するに足りる程度の違法性がない場合には犯罪を構成しないという考え方です。

可罰的違法性に関する有名な判例に「一厘事件」と呼ばれる事件があります。
これは1909年に,農家が栽培していた葉煙草2グラムを喫煙したという事件です。
これに対し検事が煙草を大蔵省専売局に納入することを怠った葉煙草専売法違反として起訴しました。
なお,葉煙草2グラムは当時1厘の価値であり,1厘とは1円の千分の一で最低通貨単位で,現在の貨幣価値に換算して約20円程度かと思われます。
この事件に対し大審院が出した判決は「人類非行ハ零細ナルモノハ悪性ノ特ニ認ムベキモノナキ限リハ其人生ニ及ボス害悪極メテ僅少ナルヲ常態トスル所ナリ」として,違法な行為であったとしても実害がほとんどなく微細な所為であれば罪には問えないというものでした。

~現代の電気窃盗~

最近では携帯電話などのこまめな充電を要する携帯機器の急速な発展と普及に伴って,公共の場や店舗のコンセントを勝手に利用して充電をするということが多発しています。
イートインコーナーや,高速バスの座席などの利用者が自由に利用することを前提としている場合には盗電とはなりませんが,それら以外のコンセントを施設管理者の許可無く利用した場合は盗電となります。

こういった盗電事案は警察の段階で多くの場合は被害額が微小であるとして微罪処分とするケースも多いですが,場合によっては逮捕や書類送検されることもあります。
2010年には大阪で料金滞納で電気を止められていた男性が,アパートの共用コンセントから自室に電気を引き込んで,2円50銭相当の電気を盗んだとして,懲役1年,執行猶予3年の判決を言い渡されています。
また,2017年には和歌山県議が温泉の電源を無断使用しハイブリッドカーを充電したとして書類送検されています。
また,以前は窃盗罪は懲役刑しか規定がなく,被害額も微小なため,微罪処分であったり不起訴処分となっていたと思われますが,2006年の刑法改正で罰金刑が加えられたことにより窃盗罪として起訴される可能性は高くなっています。

しかし罰金であっても前科となってしまうので,弁護士が付けば微罪処分や不起訴処分となるように弁護活動をしていきます。
今回のケースではお店への謝罪文や少額とはいえ被害弁償などを申し出てます。
それによって被害届の取下げとなれば微罪処分や不起訴処分となる可能性は高くなります。
また,被害届が取下げとならない場合でも,警察の判断で微罪処分となる場合や検察官の判断で起訴猶予となる可能性は高くなります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は刑事事件専門の法律事務所です。
電気に対する窃盗事件でお困りの方は0120-631-881までお気軽にお電話ください。
初回接見サービス無料法律相談のご予約を24時間受付けております。
兵庫県尼崎東警察署までの初回接見費用:37,000円)

Copyright(c) 2018 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 All Rights Reserved.