情報窃盗で刑事事件

2020-07-09

情報窃盗について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

東京都港区にあるV社の顧客の個人情報のデータベースをUSBに不正にコピーして、ライバル会社のX社に売却したとして、V社元社員のAさんがV社の社長に呼び出されました。
V社は、警視庁愛宕警察署窃盗の被害届を出すと言っています。
Aさんは、自身の行為が窃盗に当たるのか不安になり、弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

情報窃盗は窃盗か?

パソコンなどの電子機器から、その機器の所有者の許可を得ず、中に記録されている電子データを抜き取って持ち出す行為は、一般的に「情報窃盗」と呼ばれています。
情報を所有者の許可なく勝手に持ち出す行為は、窃盗罪に当たる可能性があります。

窃盗罪とは

刑法第235条 
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

窃盗罪の構成要件は、
(1)他人の財物を
(2)不法領得の意思をもって
(3)窃取した
ことです。

(1)他人の財物

窃盗罪の客体は、「他人の占有する他人の財物」です。

①財物の概念

「財物」とは、財産的価値のあるものであり、有体物であると解されてきました。
しかし、有体物でなくとも、物理的に管理することが可能なものも「財物」に該当すると解されるようになり、電気も「財物」に含まれます。
情報窃盗において問題となるのが、「情報」が「財物」に当たるか否かという点です。
この点について、「情報」それ自体は有体物ではないため「財物」には該当しません。
ですが、情報が他の媒体(例えば、紙やUSBなど)に化体されている場合は、情報と媒体を一体とみて、「財物」に該当するものとされます。
窃盗罪を認めた判決では、機密資料のファイルを内通者を介して入手し、これを会社に持ち帰って複写したあと、返却した事案において、情報の化体された媒体の財物性は、情報の切り離された媒体の素材についてだけでなく、情報と媒体が合体したものの全体をもって判断すべきであり、その財物としての価値は、主として媒体に化体された情報の価値によるとしています。(東京地判昭59・6・28)

②占有の概念

「占有」とは、人が財物を事実上支配し、管理する状態をいいます。
「占有」は、占有の事実と占有の意思で構成されます。
占有の事実というのは、占有者が財物を事実上支配している状態のことを指します。
物を客観的に支配している場合はもちろんのこと、物の支配を取り戻そうと思えばいつでも取り戻せる状態も含みます。
そして、占有の意思とは、財物を事実上支配する意欲または意思のことです。
この意思は、包括的・抽象的な意思で足り、財物に対する事実的支配が明確であれば、睡眠中であっても占有の意思が認められます。

(2)不法領得の意思

「不法領得の意思」は、条文にはありませんが、判例上認められた要件です。
「不法領得の意思」とは、権利者を排除し、他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い、これを利用しまたは処分する意思をいいます。

(3)窃取

窃盗罪の実行行為は、「窃取」であり、「窃取」とは、財物の占有者の意思に反して、その占有を侵害し、目的物を自己または第三者の占有に移すことをいいます。
窃取の意義は、占有者の意思に反して財物の占有を移転させる点にあるので、他人の飼養する鳥をかごから逃がす行為は、取りに対する他人の占有を侵害してはいるものの、自己または第三者に占有を移転してはいないので、窃盗には該当せず、器物損壊となります。
財物の他人の占有を排除して、自己または第三者の占有に移したことをもって、窃盗は既遂となります。

上の事例では、Aさんが許可なくV社の顧客の個人情報のデータベースをUSBにコピーし、ライバル会社にデータベースを売りました。
顧客の個人情報データベース(=情報)をUSBという媒体に移しているため、情報と媒体であるUSBは一体として「財物」に該当します。
Aさんは、他人(V社)の占有する顧客の個人情報データベースの情報が入ったUSB(=財物)を、ライバル会社X社に売るために(=不法領得の意思)、勝手に持ち出し(=占有の移転)、X社に渡している(=占有の移転)ため、窃盗が成立するものと考えられます。

窃盗罪は財産犯であり、被害者に損害が生じているため、窃盗事件を起こしてしまった場合には、その損害を回復することが最終的な処分結果にも大きく影響することとなります。
加害者が直接被害者に被害弁償をすることは可能ですが、逮捕・勾留されている場合や、被害者が加害者との直接のやりとりを望まない場合も多いため、一般的には弁護士を介して行われます。
また、謝罪や被害弁償を行った上で、示談に応じてもらえるよう粘り強くかつ冷静に交渉していくことも求められます。

窃盗事件を起こし対応にお困りの方は、今すぐ刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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