常習特殊窃盗で逮捕

2021-05-13

常習特殊窃盗について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
千葉県市川市の民家に夜間侵入し、金品を窃取したとして、千葉県市川警察署は県内に住むAさんを常習特殊窃盗の容疑で逮捕しました。
Aさんは、窃盗の前科が複数あり、いずれも夜間に民家に侵入して金品を窃取するというもとでした。
今回の犯行は、刑期を終えて出所後間もなくして行われました。
(フィクションです。)

常習特殊窃盗とは

なかなか聞きなれない罪名ですが、「常習特殊窃盗」は「盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律」(以下、「盗犯法」といいます。)の第2条に次のように定められています。

第二条 常習トシテ左ノ各号ノ方法ニ依リ刑法第二百三十五条、第二百三十六条、第二百三十八条若ハ第二百三十九条ノ罪又ハ其ノ未遂罪ヲ犯シタル者ニ対シ窃盗ヲ以テ論ズベキトキハ三年以上、強盗ヲ以テ論ズベキトキハ七年以上ノ有期懲役ニ処ス
 一 兇器ヲ携帯シテ犯シタルトキ
 二 二人以上現場ニ於テ共同シテ犯シタルトキ
 三 門戸牆壁等ヲ踰越損壊シ又ハ鎖鑰ヲ開キ人ノ住居又ハ人ノ看守スル邸宅、建造物若ハ艦船ニ侵入シテ犯シタルトキ
 四 夜間人ノ住居又ハ人ノ看守スル邸宅、建造物若ハ艦船ニ侵入シテ犯シタルトキ

盗犯法は、昭和5年に施行された古い法律で、盗犯に対する正当防衛の特例や兇器を携帯した常習窃盗犯の刑期の下限について定めた法律です。

盗犯法第2条は、「常習として」、「条文の1号ないし4号のいずれかの方法により、窃盗罪、強盗罪、事後強盗罪、昏酔強盗罪や、それらの未遂罪を犯した者」に対し、窃盗罪の規定を適用すべきときは、最下限の刑が3年以上の有期懲役とされ、強盗罪、事後強盗罪、昏睡強盗罪のいずれかを適用すべきときは、7年以上の有期懲役刑とされる、という内容になっています。
つまり、盗犯法第2条に該当する常習特殊窃盗罪を犯した場合には、3年以上20年以下の懲役刑に、同上に該当する常習特殊強盗罪を犯した場合には、7年以上20年以下の懲役刑に処さられることになり、通常の窃盗罪・強盗罪よりも重い刑罰が科されることになります。

ここでいう「常習として」というのは、過去の裁判では、「機会があれば抑制力を働かせることなく安易に窃盗を反復する習癖をいう」と解されます。(東京地裁判決、平成20年5月22日、東京高裁判決、平成10年10月12日)
これに当たるかどうかは、行為者の前科・前歴、素行、犯行動機、犯行手口、犯行態様、犯行回数、犯行間隔等を総合的に判断して検討されます。

この点、盗犯法第2条における常習性は、同条の1号~4号の手口・態様を用いることを要求しているので、万引きや置き引き等の単純窃盗の常習性がある者が、1号~4号の方法で窃盗・強盗を1回だけ犯した場合は、盗犯法第2条における常習性は認められません。

盗犯法第2条の各号の手口・態様は、
①兇器の携帯
②複数での犯行
③門戸等を破壊等しての侵入
④夜間での犯行
です。

上の事例を考えると、Aさんの行為が④に該当すると言えるかどうかを検討することになります。

④は、「夜間人の住居又は人の看守する邸宅、建造物もしくは艦船に侵入して犯したとき」と規定されています。
ここでいう「夜間」とは、判例によれば、その日没から日の出までの間の時間帯であるとされます。(最高裁決定、昭和28年12月18日)
同判例では、「夜間人の住居又は人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入して犯したるとき、とあって、夜間は所定の場所に侵入して盗罪を犯すという包括的一事実に掛かり、侵入することと盗むこととが共に夜間に行われた場合は勿論、そのいずれか一方が夜間に行われた場合でも、同号の夜間侵入窃盗に当たるものと解するを相当とする」としており、侵入・窃盗のいずれか一方の行為が夜間のうちに行われれば足りると理解されています。
「人の住居又は人の看守する邸宅、建造物もしくは艦船に侵入」する行為については、刑法の住居侵入等で規定されている行為と同様、日常生活に使用するために人が占拠する場所を「人の住居」といいます。
「人の看守する」とは、人が事実上、管理・支配していることをいい、その対象となる「邸宅」とは、人の住居の用に供せられる家屋に附属し、主として住居者の利用に供されるために区画された場所をいいます。
そして、「建造物」とは、住居、邸宅以外の建造物と、これに附属する囲繞地といい、「艦船」は、軍艦その他の船舶のことをいいます。
そのような場所に、管理権者の意思に反して立ち入った場合には「侵入」したと言えます。

Aさんは、夜間の侵入盗の前科が複数あり、刑務所を出てから間もなくして同種の手口で犯行に及んでいることから、常習性として行われたと認定されると考えられます。

常習特殊窃盗は、刑法の窃盗よりもその刑罰は重く、常習特殊窃盗が成立するか否かで最終的な結果も大きく異なります。
常習特殊窃盗の被疑者・被告人となった場合には、早期に弁護士に相談し、適切な対応をするのが重要です。

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