住居侵入罪、窃盗罪で牽連犯

2019-08-13

住居侵入罪、窃盗罪で牽連犯

東京都青梅市に住むAさんは、自らの借金に困り、近所のVさんの家に空き巣に入ることを計画しました。
Aさんは、Vさんが一人暮らしで、Vさんの勝手口ドアが、よく無施錠の状態で空いていること普段から確認していたのです。
そして、ある日、Aさんは、Vさんが外出したのを見計らってVさんの自宅に、無施錠の勝手口から入り、仏壇に置かれていた現金5万円の入った封筒を盗んで再び勝手口から出ました。
しかし、後日、現場に印象されていた足跡痕などからAさんの犯行だということが判明し、Aさんは、警視庁青梅警察署住居侵入罪窃盗罪の容疑で逮捕されてしまいました。
そして、Aさんは、刑事裁判で、住居侵入罪窃盗罪とは牽連犯の関係にあるとして重い窃盗罪で処断されることになりました。
(フィクションです。)

~ 住居侵入罪とは ~

住居侵入罪は刑法130条前段に規定されています。

刑法130条
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、(略)た者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

ここで「侵入」とは、住居管理権者の意思に反する立ち入りをいい、本件での住居管理者は本件住居に一人暮らしのVさんです。
そして、Aさんが、窃盗目的で住居に立ち入る行為について、Vさんが承諾するはずがありませんから、Aさんの立ち入り行為は「侵入」に当たり、Aさんには住居侵入罪が成立する可能性が高いでしょう。

~ 窃盗罪 ~

窃盗罪は刑法235条に規定されています。

刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

ここで「他人の財物」とは、他人の占有する他人の物のことをいいます。
「占有」とは、簡単にいうとその物(本件でいえば現金5万円入りの封筒(以下、本件封筒といいます))に対する支配のことをいいます。
この「占有」というためには、現実にその物を把持・監視している必要はありません。
本件封筒は仏壇に置かれていましたが、仏壇はVさんが管理する建物内にありますからVさんの支配力は当然及び、Vさんに「占有」が認められます。
「窃取」とは、暴行・脅迫によることなく、占有者(本件の場合Vさん)の意思に反してその占有を排除し、目的物を自己又は第三者の占有に移すことをいいます。
なお、自己の占有に移した時点で窃盗罪の「既遂」となります。
本件では、Aさんが封筒を手にした時点で既遂となるでしょう。

~ 牽連犯とは ~

Aさんは、住居侵入罪窃盗罪に当たる行為をしているのですから、本来であれば2個の罪が成立し併合罪の処理をされ、本来の法定刑より重く処罰されるはずです(併合罪処理の場合、窃盗罪の「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金を基準」とし、「15年以下の懲役又は75万円以下の罰金」の範囲で科刑される)。
しかし、刑法54条1項では、本来数罪の罪を、刑を科する際には1個の罪として扱うとしています。
これを科刑上一罪といいます。

刑法54条1項
1個の行為が2個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。

前半の「1個の行為が2個以上の罪名に触れ」る場合を観念的競合、「犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れる」場合を牽連犯と呼びます。
住居侵入罪窃盗罪の場合、前者が手段、後者が結果に当たりますから牽連犯です。

科刑上一罪の処理は、最も重い刑、つまり窃盗罪の法定刑(10年以下の懲役又は50万円以下の罰金)の範囲内で科刑されます。

このように、法律上は数罪であっても、社会的事実としてみれば1個の行為と評価できる場合は刑を科す上でも1個の行為と評価し、刑の公平性を担保しているのです。

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