常習累犯窃盗罪と病的窃盗癖(クレプトマニア)

2022-03-06

常習累犯窃盗罪と病的窃盗癖(クレプトマニア)について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。 

~刑事事件例~

Aさんは10年前から万引きで5回逮捕されており、最初は起訴猶予になりましたが、後の4回は1年以上の懲役刑(1回は執行猶予)を受けています。
半年前、Aさんの家族がAさんを病院に連れて行ったところ「病的窃盗癖(クレプトマニア)」の可能性が高いと診断を受け、治療を始めました。
しかしAさんは2日前に、千葉市中央区のコンビニで万引きをして、常習累犯窃盗罪で千葉県千葉中央警察署に逮捕されました。
Aさんの家族は「Aが新しく万引きをしないためにも、病的窃盗癖(クレプトマニア)の治療を続けさせたい。何とかならないか。」と考え、刑事事件に強い弁護士に弁護を依頼しました。
(フィクションです)

万引きは窃盗罪ですよね?

万引きは軽い言葉に聞こえるかもしれませんが、他人の財物を盗む点でまぎれもなく窃盗罪です。
条文は
「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」(刑法第235条)
となっており、重い罪であることがわかるかと思います。

常習累犯窃盗罪とはどのような罪ですか?

Aさんが逮捕された、常習累犯窃盗罪とはどのような罪でしょうか?
刑法ではなく、「盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律」という古い法律に定められています。

※読みやすくするため、カタカナをひらがなに直しています。

常習として前条に掲げたる刑法各条の罪(※刑法235条、236条、238条、239条のことを指します。)又は其の未遂罪を犯したる者にして其の行為前10年内に此等の罪又は此等の罪と他の罪との併合罪に付3回以上6月の懲役以上の刑の執行を受け又は其の執行の免除を得たるものに対し刑を科すべきときは前条の例に依る。(盗犯等の防止及処分に関する法律3条)

つまり
①「常習として」窃盗や強盗等の罪を犯したという要件
②10年以内に同種の罪で3回以上6月以上の懲役刑(その執行が猶予された場合も含みます)を受けているという累犯性の要件
を満たした場合に成立します。
法定刑は「3年以上の懲役刑」とされており、窃盗罪にあった罰金がなくなり、長期間刑務所で服役する可能性が高くなります。

病的窃盗癖(クレプトマニア)とはなんですか?

窃盗(主に万引き)を止めたくても、意思の力では止められない「依存症」という病気のことです。
病的窃盗癖(クレプトマニア)の診断基準はいくつかありますが、詳しくは医療機関へお尋ねください。

病的窃盗癖(クレプトマニア)と責任能力について

万引き事件の場合、病的窃盗癖(クレプトマニア)として責任能力が否定されることはあるのでしょうか?
責任能力が否定される状況としては、その商品を必要とする理由もなく、商品を手に取ると何も隠さず店を出て、店員などに声をかけられても何も反応しない等、普通の万引き事件と比べて異常な状況であることが必要とされ、大変限定的とされることが多いです。

弁護活動について

クレプトマニア(窃盗症)であると診断された場合、刑務所等で行われる矯正処遇だけでは、再犯を防ぐことは難しいため、適切な治療を受けていくことが欠かせません。
そしてその治療の経過報告や結果を検察官や裁判官に伝えていくことで、被疑者の方やそのご家族の方がしっかりと再犯防止対策をとっていることを主張していきます。
また、常習累犯窃盗罪は被害者の方がいる罪であるため、示談交渉が重要になります。
示談は、ほぼ弁護士にしかできません。
ですので弁護士を通して、被害者の方への謝罪と被害弁償金の支払いを行うことになるでしょう。
示談が成立した時は、示談書等を検察官や裁判官に提出し、被疑者の方が示談金を支払い、しっかりと反省していることを主張していくことになると考えられます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、年間多数の刑事事件への対応をしてきた刑事事件専門の法律事務所です。
病的窃盗癖(クレプトマニア)に詳しい弁護士も在籍しております。
ご家族やご自身が常習累犯窃盗罪で話を聞かれることになった、逮捕されてお困りの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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