【事例解説】バス車内での置き引き事件で捜査対象に(後編)

2025-07-08

バス内に置き忘れられていた財布を持ち去って警察からの呼び出しを受けている事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【事例】

愛知県内で自営業を営むAさんは、乗車していたバスの車内で置き忘れられた財布を見つけました。周囲に持ち主らしき人がいなかったため、Aさんはこれを持ち帰りました
他方、財布の持ち主であるVさんはバスから降りて、自宅についてから財布をバス内に置き忘れたことに気づきました。そこで、Vさんはバス会社に問い合わせましたが財布が見つからなかったため、警察に被害届を出しました
警察の捜査の結果、防犯カメラ等からAさんが怪しまれ、Aさんが捜査対象になっていましたが、まだAさんのもとに警察から連絡は来ていませんでした。
Aさんはなんてことをしてしまったんだと後悔の念に駆られ、弁護士に相談することにしました
(この事例はフィクションです)

【今回の事例で問われうる犯罪(続き)】

この両罪を分けるのは、物に対する占有があったか否かです。
すなわち今回の事例では、Vさんがバスを降りた後も財布を占有していたと評価できるかどうかです。
Vさんの占有が肯定される場合、Aさんは「他人の財物を窃取」したことになるため窃盗罪に問われることになるでしょう。
他方、Vさんの占有が否定される場合、Aさんは「占有を離れた他人の物を横領」したことになるため占有離脱物横領罪に問われることになります。

この点について、刑法上の占有が認められるためには、客観的な要件としての財物に対する事実上の支配と、主観的な要件としての財物を支配する意思が必要であると考えてられています。
そしてそれらの事由を総合的に考慮して、占有の有無が判断されます。

今回の事例では、Vさんの主観面での財物を支配する意思は認められるため、客観面について、バスから降りて1時間の時点でVさんが財布を事実上支配していたか否かが争点となります。
事実上の支配についての認定は、様々な事情を総合的に考慮して判断されるため、必ず認定、ないしは否定されると明言することは難しいといえます。
この点について、5分程度の短時間かつ10数メートル程度の短い距離で、その物から離れた場合に占有を肯定した事例がありますが、Vさんはバスから降車して30分と時間が経っており、かつ財布とVさんは物理的にもかなり離れていることから、占有離脱物横領罪に問われる可能性が高いといえるでしょう。

【窃盗事件を起こしてしまったら】

もしも窃盗事件を起こしてしまい、前科を回避したいと考えた場合、被害者との間で示談交渉を進めることが最も重要になります。
そのため被害者との間で、被害弁償及び示談交渉を行い、可能であれば宥恕条項付きの示談締結を目指します。早期に被害者との示談を成立することができれば、検察官による不起訴処分を受ける可能性を高めうるといえます。
起訴され正式裁判となった場合であっても、被害者の方との示談が成立した場合はその事実を裁判所に主張し、これに加えて、被害弁償が済んでいること等を主張して、罰金刑や執行猶予判決の獲得を目指します
刑事処分の軽減のためには、迅速かつ適切な弁護活動が不可欠ですので、お困りの場合は速やかに刑事事件に強い弁護士にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
窃盗事件を起こしてしまった、家族が窃盗事件で逮捕されてしまった方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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