【事例解説】旅館の共用部に忘れてあった財布を盗み逮捕②

2024-06-28

旅館の共用部に忘れてあった財布を盗んだ事例について2回に分けて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

旅館

【事例】

愛知県在住の会社員Aさんは、宿泊した旅館のロビーに財布が置いてあるのを発見しました。
そうしたところ、周囲に持ち主らしき人がいなかったため、Aさんは自分のものにしようとして、財布を持ち去りました。
その後、財布の持ち主であるBさんが置き忘れに気付き、ロビーに戻ってきたものの、財布が見つからなかったため、盗まれたと思い、警察に被害届を出しました
後日、捜査を進めた警察によってAさんは逮捕されることとなりました。
(フィクションです)

【今回の事例で問われうる犯罪】

今回の事例では、占有離脱物横領罪窃盗罪のいずれかに問われうる可能性があります。

占有離脱物横領罪とは、刑法254条(出典/e-GOV法令検索)により「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領」する罪であると定められており、その法定刑として「一年以下の懲役又は十万円以下の罰金若しくは科料」が定められています。

他方、窃盗罪とは、刑法235条(出典/e-GOV法令検索)により「他人の財物を窃取」する罪であると定められており、その法定刑として「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金刑」が定められています。
以上のようにこれらの罪についての法定刑は、大きな隔たりがあるため、どちらの罪に問われるかは極めて重要な点となります。

この両罪を分けるのは、物に対する占有があったか否かです。
すなわち今回の事例では、ロビーに置き忘れられた財布にBさんの占有が及ぶと評価できるかどうかです。
Bさんの占有が肯定される場合、Aさんは「他人の財物を窃取」したことになるため窃盗罪に問われることになるでしょう。
他方、Bさんの占有が否定される場合、Aさんは「占有を離れた他人の物を横領」したことになるため占有離脱物横領罪に問われることになります。

この点について、刑法上の占有が認められるためには、客観的な要件としての財物に対する事実上の支配と、主観的な要件としての財物を支配する意思が必要であると考えてられています。
そしてそれらの事由を総合的に考慮して、占有の有無が判断されます。

今回の事例では、Bさんの主観面での財物を支配する意思は認められるため、客観面について、ロビーに置き忘れていた財布をBさんが事実上支配していたか否かが争点となります。
事実上の支配についての認定は、様々な事情を総合的に考慮して判断されるため、必ず認定、ないしは否定されると明言することは難しいといえます。
今回の場合、仮に財布がBさんの占有を離れたと評価される場合でも、なお旅館の支配人の占有があると評価されれば、Aさんは窃盗罪に問われることになるでしょう。
この点について、旅館のトイレに財布が置き忘れられた事例で、財布の所有者の占有は否定しつつも、旅館の主人の占有を肯定した事例があります(大判大正8・4・4)。今回の事例もこれとほぼ同様のケースであるため、Aさんは窃盗罪に問われる可能性が高いといえるでしょう。

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