【事例解説】窃盗に入った犯人を見逃した事例②

2024-09-21

窃盗に入った犯人を見逃した事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【事例】

愛知県内に住むAさんは、雑居ビルの夜間警備のアルバイトをしていました。
そうしたところ、夜間の見回り中に、知り合いのBさんがビル内のテナントから金品を盗みだしているところを発見しましたが、知り合いということもあり、その場では見逃すことにしました。
しかし、後日Aさんは気が変わり、「盗んだ金品の一部をよこさなければ、犯行を警察に言うぞ」とBさんを脅し、Bさんが盗んだ金品総額100万のうちの30万円程度に相当する金品を受け取りました
後日、Bさんは警察により逮捕され、Aさんは事件関係者として警察に呼ばれるに至りました。
そこでAさんは弁護士に今後の対応を相談することにしました。
(フィクションです)

【今回の事例で成立しうる犯罪】

Aさんに成立する犯罪

まず、Aさんには窃盗罪の幇助犯が成立することが考えられます。
「幇助」とは、実行行為(具体的な犯罪行為)以外の行為で正犯(今回の事例でいうBさん)の犯行を容易にする行為のことを言います。この「幇助」については、刑法62条1項同2項63条(出典/e-GOV法令検索)によって、従犯とし、正犯の刑を減軽した刑を科すという旨が定められています。
今回の事例で問題となるのは、以下の2点です。
Aさんの見逃すという不作為が「幇助」にあたるか
Aさんの手助けをBさんが知らない場合でも「幇助」にあたるか

Aさんは「Bさんを見逃す」という不作為によってBさんの犯行を手助けしていますが、この場合も、Aさんの「Bさんを見逃す」という不作為は「幇助」にあたるのでしょうか。
この点につき、先程の「幇助」の定義に基づけば、不作為によって正犯の犯行を容易にすることも可能であるといえます。そのため、不作為も「幇助」に該当するといえます。
しかし、全ての不作為が「幇助」に該当すると解しては、著しい不合理を招く場合もあるため、犯罪を防止すべき法的作為義務に反していることや、作為の可能性・容易性を考慮して、「幇助に該当するかを判断します。
この点につき、Aさんはビルの夜間警備員としてアルバイトをしているため、Bさんの犯罪行為を防止する法的作為義務が存在していたといえます。また、警備員としての装備も持っていたでしょうから、Bさんを止めることは可能であり、かつ容易であったと評価できます。
以上より、Aさんの不作為は「幇助」に該当する可能性が高いといえます。

また、Aさんの手助けを知らずにBさんは犯行を行いましたが、この場合にもAさんの行った手助けは「幇助」となるのでしょうか。
この点については、先程の「幇助」の定義に基づけば、Bさんが幇助の事実を知らない場合であっても、Bさんの犯行を容易にすることは可能ですから、そのような場合には「幇助」にあたると評価できます。
Aさんの見逃した行為はBさんの犯行を容易にしたと評価できるため「幇助」にあたるといえます。

以上より、Aさんの見逃した行為は「幇助」にあたり、窃盗罪の幇助犯が成立することになります。

次回はBさんに成立し得る犯罪の続きを解説していきます。 

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は窃盗事件をはじめとする刑事事件・少年事件を中心に取り扱う法律事務所です。
窃盗罪の疑いで警察に逮捕され、弁護士の無料相談・初回接見をご依頼の方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで一度ご相談ください。
無料相談・初回接見の申込は、フリーダイヤル(0120-631-881)で受け付けております。
24時間受付中ですので、お気軽にお電話ください。

Copyright(c) 2018 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 All Rights Reserved.