【事例解説】窃盗目的で侵入した店舗で警備員と争いに(後編)
窃盗目的で侵入した店舗内において、警備員が死んでしまった事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事例】
愛知県内に住むAさんは、窃盗目的で、深夜、閉店後の商業施設に侵入しました。
店内を物色していたところ、夜間の見回りにあたっていた警備員Bさんに発見され、取り押さえられそうになったため、AさんはBさんに対して暴行を行い、拘束したうえで、店内の物品を自家用車に積むために運び出しました。
そうしたところ、運び出そうとした物品の一部が棚から落ち、Bさんはそれによって頭部を強く打ち付けられ、その結果、数時間後に死亡しました。
(フィクションです)
【今回の事例で成立する可能性のある犯罪】
④強盗致死罪
次に、Aさんの強盗の際に、Bさんが死亡していることから、Aさんには強盗致死罪が成立する可能性があります。
強盗致死罪とは、刑法240条(出典/e-GOV法令検索)により、「強盗が、人を…死亡させた」罪であると定められており、その法定刑として「死刑又は無期懲役」が定められています。
しかし、Bさんの死亡という結果は、Aさんによる犯行抑圧手段たる暴行から発生したものではありません。それでは、今回の事例では、強盗致死罪が成立するでしょうか。
この点について、そもそも強盗致死罪は、犯罪学的観点より、強盗の機会に人の死傷という重大な結果を伴うことが多いことに鑑み、生命・身体の安全を保護する観点から規定されています。
それゆえに、死傷結果は強盗の機会に行われた行為によって生じれば足りるといえます。
もっとも、強盗の機会の行われた死傷結果につき、すべて強盗致死罪が成立するとすると処罰範囲が不当に拡大することになり、適切とはいえません。
以上を踏まえて、強盗行為と密接な関連を有する行為から生じた死傷結果については、強盗致死罪が成立すると考えられます。
これを今回の事例で見るに、物品を運び出す行為は強盗行為の目的を達成するための行為であり、強盗行為と密接な関連を有する行為といえます。そして、物品を運び出すことによって、Bの死亡という結果が発生しています。
よって、今回の事例では、Aさんには強盗致死罪が成立するといえます。
【窃盗事件を起こしてしまったら】
もしも窃盗事件を起こしてしまい、前科を回避したいと考えた場合、被害者方との間で示談交渉を進めることが最も重要になります。
そのため被害者方との間で、被害弁償及び示談交渉を行い、可能であれば宥恕条項付きの示談締結を目指します。早期に被害者との示談を成立することができれば、検察官による不起訴処分を受ける可能性を高めうるといえます。
また、起訴され正式裁判となった場合であっても、被害者方との示談が成立した場合はその事実を裁判所に主張し、これに加えて、被害弁償が済んでいること等を主張して、減刑を目指します。
刑事処分の軽減のためには、迅速かつ適切な弁護活動が不可欠ですので、お困りの場合は速やかに刑事事件に強い弁護士にご相談ください。