【事例解説】窃盗を教唆し盗品の販売をあっせんしたとして逮捕②
窃盗を教唆し、盗品の販売をあっせんしたとして逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事例】
愛知県内に住む会社員Aさんは、冗談のつもりで、知人のBさんに「Vのカバンを盗んだら高く売ってやるよ」などと伝えました。そうしたところ、BさんはAさんの言葉を真に受けて、Vさんからカバンを盗みました。
後日、Aさんは、Bさんから「Vのカバンを盗んだからどこかに売ってくれ」と頼まれ、カバンを売るか迷ったものの、上記の事情を知らない中古品販売店を営むCさんに売りました。
その後、AさんとBさんは販売代金を3;7の割合で分け合いました。
後日、AさんとBさんは警察によって逮捕されることとなりました。
(フィクションです)
【Aに成立しうる犯罪】
次に、Aさんについては、窃盗罪の教唆と盗品等関与罪に問われる可能性があります。
まず教唆とは、他人を唆して犯罪を実行する決意を生じさせることをいい、刑法61条に定めが置かれています。そして、その刑罰として「正犯の刑を科する」とされています。
今回の事例では、窃盗罪の教唆が問題となっているため、窃盗罪の教唆が認められる場合「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金刑」が科されることになります。
そしてこの教唆が成立するためには、以下の4点を満たす必要があります。
①教唆行為の存在
②教唆に基づく正犯の実行行為
③正犯結果の発生
④教唆犯の故意
これらを今回の事例に当てはめると、
AさんはBさんを唆しており、その教唆に基づきBさんは窃盗行為を行い、Vさんのカバンを窃盗しているため上記①~③を充足しています。
そして、Aさんが、教唆した結果としてBさんが実行行為を行うことについての認識・認容があれば、Aさんの故意を認定できます。
この点について、Aさんは冗談という認識であり、自身の発言でBさんが本当に実行行為に及ぶとは思いもよらなかったという場合には故意が否定されます。
本件では、Aさんに窃盗罪の教唆が成立するか否かは争点となる可能性が高いといえるでしょう。
またAさんは盗品等関与罪に問われる可能性があります。
盗品等関与罪とは、盗品等を譲り受けることや運搬・保管・有償処分のあっせんに関与する罪の総称で、刑法256条(出典/e-GOV法令検索)によって定められています。
具体的には、1項で盗品等を無償で譲り受けた場合、2項で盗品等を運搬・保管・有償で譲り受けた・有償の処分のあっせんの場合を規定しており、それぞれ刑罰として「3年以下の懲役」と「10年以下の懲役および50万円以下の罰金」が定められています。
そのため、今回の事例では、Aさんは256条2項の定める盗品等有償譲受罪に問われる可能性があります。
【Cに成立しうる犯罪】
次にCさんについては、Bさんの窃盗の事実や買い受けたカバンがVさんからの盗品であることについて善意(何も知らない)のですから、何かしらの罪に問われることはありません。
さらに、民法192条に定められる動産の善意取得によって、Cさんはカバンの所有権を取得します。ただし、Bさんによる窃盗の時点より2年間は、Vさんにも追求権(返還請求権)が認められるため、確定的な所有権の取得できるわけではないという点には注意が必要です。
【具体的な弁護活動】
今回の事例のように、窃盗などの事件を起こしてしまった場合には、早期に弁護士を事件に介入させることをお勧めします。
具体的には、まず不利な自白調書が作られないようにするために、取調べについてのアドバイスを行います。
また、早期の身体解放を目指します。逮捕は、最長72時間の時間制限があり、その後に検察官が行う勾留請求によって裁判所が勾留決定を出せば、10日間から20日間も身体拘束が続くことになるため、もしも拘束された場合には日常生活に大きな支障が出る可能性が高いです。そこで、これを阻止するために、弁護士は、検察官や裁判官と交渉し、逮捕後の勾留を阻止するための主張を行う、勾留決定に対して準抗告を行うなど、釈放に向けた働きかけを行います。
加えて被害者方との間で、被害弁償及び示談交渉を行い、可能であれば宥恕条項付きの示談締結を目指します。早期に被害者方との示談を成立することができれば、検察官による不起訴処分を受ける可能性を高めうるといえます。
また、起訴され正式裁判となった場合であっても、被害者方との示談が成立した場合はその事実を裁判所に主張し、これに加えて、被害弁償が済んでいること等を主張して、罰金刑や執行猶予判決の獲得を目指します。
刑事処分の軽減のためには、迅速かつ適切な弁護活動が不可欠ですので、お困りの場合は速やかに刑事事件に強い弁護士にご相談ください。