窃盗で保護観察付執行猶予

2021-07-22

保護観察付執行猶予について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
1年前に窃盗執行猶予付き判決が言い渡されたAさんは、千葉県市原市のドラッグストアで商品を万引きするという窃盗事件を起こしました。
Aさんは、千葉県市原警察署窃盗の容疑で逮捕されました。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、執行猶予期間中の再犯であることから、今回は実刑となるのではないかと心配しています。
(フィクションです。)

執行猶予期間中の再犯

万引きなどの比較的軽微な窃盗犯であっても、執行猶予期間中に再び罪を犯してしまうと、基本的には、刑の執行猶予が取消され、実刑判決が言い渡されることになります。

刑の執行猶予というのは、判決で刑を言い渡すにあたり、被告の犯情を考慮して、一定の期間法令の定めるところにより刑事事件を起こさずに無事に経過したときは刑罰権を消滅させる制度のことです。
執行猶予が付けば、すぐに刑務所に入ることありませんし、執行猶予期間中に罪を犯すことがなければ、刑は執行されることはありません。
すべての場合に執行猶予を付けることができるわけではなく、次の要件を満たす場合に、裁判官が刑の全部の執行を猶予することができます。

■刑の全部の執行猶予の要件■

①(a)前に禁錮以上の刑に処せられたことがないこと、又は、
 (b)前に禁固以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日またはその執行の免除を得た日から5年以内に禁固以上の刑に処せられたことがないこと。
②3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金の言渡しをする場合。
執行猶予を相当とするに足りる情状があること。

これらの要件を満たす場合に、裁判官は刑の全部の執行を猶予することができます。

執行猶予付き判決が言い渡され、実刑を回避することができた場合であっても、執行猶予が取消されることがあります。

必ず執行猶予が取消される(必要的取消事由)のは次の場合です。
①猶予期間内に更に罪を犯して禁固以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき。
②猶予の言渡し前に犯した他の罪について禁固以上の刑に処せられ、その刑の全部について執行猶予の言渡しがないとき。
③刑に処せられてから5年を経た者および刑に処せられた執行を猶予された者を除き、猶予の言渡し前に他の罪について禁固以上の刑に処せられたことが発覚したとき。

また、裁量的に執行猶予の言渡しの取消しができる(裁量的取消事由)のは次の場合です。
①猶予期間内に罪を犯し、罰金に処せられたとき。
②刑法第25条の2第1項の規定により保護観察に付せられた者が遵守すべき事項を遵守せず、その情状が重いとき。
③猶予の言渡し前に他の罪について禁固以上の刑に処せられ、その刑の全部の執行を猶予されたことが発覚したとき。

執行猶予が取消しになる事例のほとんどが執行猶予期間中の再犯です。
しかし、執行猶予が取消されるには、単に執行猶予期間中に執行猶予に付さない自由刑に相当する罪を犯しただけでは足りず、さらに執行猶予期間中に執行猶予に付さない自由刑が確定した上で、執行猶予期間の満期までに執行猶予取消決定の効力が生じることが必要です。

さて、上の事例のように、窃盗の罪を犯し、執行猶予付き判決が言い渡された者が、執行猶予期間中に再び窃盗の罪を犯した場合には、基本的には今回の窃盗事件について執行猶予なしの判決(実刑判決)が言い渡されることになります。
ただし、この場合であっても、再び執行猶予付きの判決が言い渡される可能性があります。

再度の執行猶予は、
①前に禁固以上の刑に処せられ、その執行の猶予中であること。
②1年以下の懲役または禁錮を言い渡す場合であること。
③情状が特に酌量すべきものであること。
の要件を満たす場合には、裁判官は刑の全部を執行することができます。
ただし、刑法第25条の2第1項により、刑の執行猶予保護観察に付され、その保護観察期間内に更に罪を犯した場合には、執行を猶予することは許されません。

保護観察付執行猶予

刑の執行が猶予される場合、合わせて保護観察に付されることがあります。
裁判官は、初度の場合の執行猶予を付す際に、猶予の期間中に保護観察に付することができ、再度の場合の執行猶予については、猶予期間中に保護観察に付さなければなりません。
保護観察は、罪を犯した人が、社会の中で更生できるように、保護観察官および保護司による指導と支援を行う制度です。
保護観察対象者には、守らなければならない約束事があり、それを破ってしまうと、刑の執行猶予の言渡しが取消されてしまうことになります。

執行猶予期間中の再犯の場合にも、再度の執行猶予となる可能性はあります。
ただし、先の執行猶予保護観察が付されている場合には、再度の執行猶予の要件を満たさず、再度の執行猶予となることできません。
また、再度の執行猶予となった場合には、必ず保護観察に付されることになりますので、その期間中に再び罪を犯せば、実刑判決が言い渡されることになります。

執行猶予期間中の再犯は基本的には実刑となる可能性が高いのですが、ケースによっては再度の執行猶予が見込める場合もありますので、まずは刑事事件に詳しい弁護士に相談されるのがよいでしょう。

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