窃盗の前科・前歴
窃盗の前科・前歴について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
東京都羽村市のコンビニで商品を万引きしたとして、警視庁福生警察署は、会社員のAさんを窃盗の容疑で逮捕しました。
Aさんは翌朝釈放されましたが、実は、万引きと遺失物等横領の前歴があり、今回の事件で前科が付いてしまうのではないかと心配しています。
何とか前科を回避したいAさんは、刑事事件専門弁護士に相談の電話を入れました。
(フィクションです。)
前科とは
世間では、刑に服して刑務所から出所した人を「前科者」と呼んでいることが多いようですが、一般的には、「前科」という用語は、前に刑に処せられた事実のことを意味し、刑に服したかどうかということではなく、有罪の刑事裁判を受け、その裁判が確定したかどうかで、前科があるのかないのかが分かれることになります。
「前に刑に処せられた」とは、全ての有罪の確定判決をいいます。
その刑は、死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料である場合だけでなく、刑の免除、刑の執行免除が言い渡された場合も含みます。
ただし、裁判所で言い渡されたものであっても、過料等の行政罰や没収、追徴などのいわゆる追加刑は前科ではありません。
前科には、検察庁が保管するものと市区町村が保管するものとの2種類があります。
検察庁は、検察運営の適正及び裁判の適正に資することを目的として、「電子計算機又は犯歴表頭への前科の登録」を行っています。
検察庁の前科の具体的な利用方法は、
①検察官の起訴、不起訴の処分及び求刑等の情状資料
②裁判所の量刑資料
③執行猶予を付するための条件該当の有無の判断資料
④執行猶予取消事由の有無の判断資料
⑤常習犯の常習性の有無の判断資料
などとしての活用があります。
もうひとつは、従来から実施されている身分証明事務及び公職選挙法4章で規定する選挙人名簿調製事務に資することを目的として、前科を有する者の戸籍事務を管掌する市区町村で行っている「犯罪人名簿への前科の登録」です。
市区町村における犯罪人名簿の整理保管の目的は、専ら身分証明事務と選挙人名簿調製事務に資するためであるので、犯罪人名簿が身分証明事務・選挙人名簿調製事務のために必要でなくなったときは、これを整理保管しておく必要がなく、人権擁護の観点からもいつまでも保管しておくことは好ましくないため名簿を抹消することとしています。
例えば、
①刑法34条の2の規定により、名簿に登録されている犯歴の刑の言渡しの効力が失われたとき
②刑法27条の規定により、名簿に登録されている犯歴(執行猶予に付されている刑)の刑の言渡しの効力が失われたとき
③恩赦法2条の規定による大赦または4条の規定による特赦により、名簿に登録されている者の犯歴の有罪の言渡しの効力が失われたとき
④恩赦法9条の規定におる復権により、名簿に登録されている者が犯歴の存在により喪失し又は停止されていた資格の全部を回復したとき
などがあります。
前歴とは
前科の他に、「前歴」という用語を耳にされたことがある方も少なくないのではないでしょうか。
前科は前に刑に処されたことがあることを意味するのに対して、前歴は、捜査機関から犯罪の捜査を受けた事実を指します。
前科も前歴も法律上明確な定義があるわけではありませんが、一般的には、前科や逮捕歴、犯歴などを含めた広い概念として前歴が用いられています。
窃盗事件で、微罪処分で処理された場合でも、検察官に呼び出されたが不起訴処分となり事件が終了した場合でも、前科は付かずとも前歴が残ることになります。
前科・前歴があった場合
前科・前歴がある者が罪を犯した場合、初めて罪を犯した者(=初犯)としては扱われません。
そのため、初犯と比べると、より厳しい処分となる可能性は高くなります。
窃盗の前科・前歴がある者が、再び窃盗事件を起こした場合には、常習性が疑われますし、社会内での更生の可能性が低いと判断されてしまうでしょう。
特に前科の場合、法律で定める一定の不利益をもたらすことになります。
例えば、
①執行猶予を付し得ない事由
②執行猶予の取消事由
③再犯加重の事由
④仮釈放の取消事由
⑤常習犯の認定事由
⑥必要的保釈を消極とする事由
⑦特定の法令が定める資格制限事由
などがあります。
前科・前歴が付くことで被り得る不利益は様々ありますので、刑事事件を起こし対応にお困りの方は、すぐに弁護士に相談し、適切に対応されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
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