窃盗罪で罰金刑?

2019-10-07

窃盗罪で罰金刑?

窃盗罪の罰金刑について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

兵庫県川西市に住むAさんは、平成26年8月20日に、近所にあるスーパーで食料品10点を万引きしたとして兵庫県川西警察署に検挙されましたが、Aさんの息子さんが被害弁償するなどしたため微罪処分に終わりました。
しかし、Aさんは、平成28年8月20日に、同じスーパーで食料品1点を万引きしたとして検挙されましたが、このときもAさんの息子さんが被害弁償するなどして不起訴処分に終わりました。
ところが、Aさんは、令和元年8月20日に、同じスーパーで食料品5点を万引きをして兵庫県川西警察署窃盗罪の容疑で逮捕されてしまいました。
そして、Aさんは窃盗罪で略式起訴され、罰金30万円の略式命令を受けてしまいました。
(フィクションです)

~ 窃盗罪には罰金刑が規定されている ~

窃盗罪に罰金刑が規定されてあることをご存じでしょうか?
窃盗罪が規定されてある刑法235条を見ると

刑法235条
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

とされています。

強盗罪、詐欺罪、背任罪、恐喝罪、横領罪には懲役刑しか規定されていないのに、窃盗罪に罰金刑が規定されているのはなぜでしょうか?

~ 窃盗罪に罰金刑が規定された背景 ~

実は、以前は、窃盗罪に罰金刑は規定されていませんでした。
ところが、平成18年に施行された改正刑法により、窃盗罪に罰金刑が新設されたのです。

その背景は「万引き事件の増加」です。
平成18年までの万引きの認知件数を見ると、平成一桁代では10万件を切る、あるいは10万件代で推移していたものの、平成10年代に入ると、

平成13年 12万6110件
平成14年 14万0002件
平成15年 14万6308件
平成16年 15万8020件
平成17年 15万3972件
平成18年 14万7113件

と増加していることが分かります。
一言で万引きといっても被害額が少額な比較的軽微な事案から重大な事案なものまで様々で、懲役刑しか規定されていなかった時代には、「懲役刑にまでは処する必要がない」と思われる比較的軽微事案では、刑事処分を決める検察官は不起訴処分とせざるを得ませんでした。
そこで、このような事案についても刑事処罰(罰金刑)を科して万引きの抑制につなげよう、という意図で罰金刑が新設されたのです。 
ちなみに、平成18年以降は万引きの認知件数は徐々に下がりはじめ、平成29年は10万8009件でした。

(認知件数は「平成30年度版 犯罪白書」を参照)

~ 窃盗罪に罰金刑が科される場合とは? ~

窃盗罪で罰金刑が科される典型的なケースは、初犯、つまり前科がない場合です。
確かに、Aさんは平成26年と平成28年に万引きしていますが、そのいずれの場合でも刑事処罰(懲役刑、罰金刑)は受けていません。
ちなみに、微罪処分は警察が被疑者に対し厳重注意、訓戒するにとどまり、事件を検察庁へ送致しない処分、不起訴処分は起訴しない処分のことをいいます。

いずれの場合でも前科として記録されず、あくまで前歴が残るだけです。
このように、過去に何回かの前歴を有し、今回はじめて刑事処罰を科す必要がある判断された場合は罰金刑を科される可能性が高いでしょう。

~ 窃盗罪の罰金は誰でも納付できる? ~

お金がないからこそ万引きしたのに、さらに刑罰で罰金刑を科すのは酷なのでは?と思われる方もいらっしゃると思います。
しかし、最近は、万引きする動機は様々で、単に「お金がないから」という単純なものではなくなってきています。
また、仮に、お金がない場合でも、実際に納付するのはご本人でなければなりませんが、罰金の原資となるお金は本人以外のお金でもよいわけです。
つまり、お金がなく納付できない、という場合はご家族等の援助を受けて納付することもできます。
この点が懲役刑と大きく異なる点です(懲役刑は、本人以外の人が代わりに刑の執行を受けるということはできません)。

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