少年に万引きをさせて逮捕
少年に万引きをさせて逮捕
少年に万引きをさせて逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事例】
京都府長岡京市在住のAは、10歳の息子Bと共に二人で暮らしていた。
しかし、仕事で得た給料の大半をパチンコや競馬といったギャンブルにつかっていたことから生活が困窮し、食費にも困るようになった。
そこでAは、自宅近くのスーパーでお惣菜を万引きしようと思い立った。
しかしAには窃盗罪の前科があり、前回の事件の際に、裁判官から「次に窃盗事件を起こしたら刑務所に行かなければならないことになる」と言われていたことから、息子Bに命令して同スーパーで万引きをさせることにした。
Aの命令に対し当初Bは嫌がったが、Aは嫌がるBを怒鳴りつけた上、複数回Bの顔面を殴打したところ、Bは大人しくなりAの命令に従って万引きをするようになった。
その後もAはBに命令してスーパーでの万引き行為を何度かさせていたところ、スーパーの店員にBの万引き行為を発見され、Bが店員に対し父親Aに命令されて万引きを行ったことを話したことから、店員が警察に通報することにした。
その後、Aは窃盗容疑で京都府向日町警察署の警察官に逮捕されてしまった。
(事実をもとにしたフィクションです)
~自ら犯行をしなくても犯罪に~
上記の事例においては、Bは10歳の少年であることから「刑事未成年」に当たり、Bの行為には犯罪は成立しないことになります(刑法41条)。
また、万引き行為そのものを行ったのはBであり、A自身は万引き行為を行っていません。
仮に万引き行為を行ったのがBである以上、Aに窃盗罪が成立しないとすると、万引き行為について責任を負う者がいなくなってしまうという不都合が生じてしまいます。
そのような不都合を生じさせないために、実際には、他人を道具として利用し、犯罪を実現させた者についても犯罪の成立が認められることがあります(「間接正犯」と呼ばれます)。
例えば、人を殺すために飲料に毒薬を入れ、郵便でその毒薬入り飲料を被害者宅に届け、被害者がそれを飲んで死亡したという場合、犯人は郵便局員を道具として利用し、殺人行為を完成させています。
~間接正犯の成立条件~
間接正犯として犯罪が成立するためには、他人を一方的に支配利用したといえる必要があると考えられています。
上述の郵便局員のケースでは、郵便局員は郵便物の中身を知った上で被害者に届けているわけではなく、預けられた荷物をそのまま宛先に送ることになることから、一方的な支配利用関係が認められます。
他方、上記のBの場合については、自らの万引き行為そのものについて認識して行っているいることから、一方的な支配利用関係があるといえるか問題となります。
そこで判例は、刑事未成年を利用したからといって常に間接正犯の成立を認めているわけではありません。
しかし日頃から強度の虐待を加えていた12歳の養女に命令して賽銭泥棒をさせたという事案において、「被告人が、自己の日頃の言動に畏怖し意思を抑圧されている同女を利用して右各窃盗を行ったと認められる」として間接正犯の成立を認めています(最高裁昭和 58年9月21日決定)。
今回の事例において、Aは万引き行為を嫌がるBに対し怒鳴りつけた上で顔面を複数回殴打するという暴行を加えています。
このような暴行によってBが畏怖し意思を抑圧された状態で万引き行為を行ったと評価されれば、AはBを道具として窃盗をしたとして間接正犯が成立することになります。
このように、他人が関与した犯罪の場合にどのような問題があるのか、その判断は難しいところがありますので、専門的な知識を持った弁護士に相談することが重要となります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所には、刑事事件や少年事件に精通した弁護士が多数在籍しております。
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