【事例解説】トイレに置き忘れられたカバンを盗んだ事例(後編)
トイレに置き忘れられたカバンを盗んだ事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【事例】
愛知県内に住む大学生のAさんは、名古屋市内の商業施設内のトイレに置き忘れられていたカバンを盗みました。
その5分後、カバンの持ち主であるBさんはカバンを置き忘れたことに気付き、トイレに戻りましたが、その時にはすでにかばんは無くなっていました。
そこでBさんが被害届を出し、警察が捜査を進めたところ、商業施設内の防犯カメラにカバンを持つAさんらしき人物が写っていました。
それが決め手となり、Aさんは逮捕されることになりました。
(フィクションです)
【今回の事例で問われうる犯罪】
刑法上の占有が認められるためには、客観的な要件としての財物に対する事実上の支配と、主観的な要件としての財物を支配する意思が必要であると考えてられています。
そしてそれらの事由を総合的に考慮して、占有の有無が判断されます。
今回の事例では、Bさんの主観面での財物を支配する意思は認められるため、客観面について、トイレから出た後の時点でBさんが財布を事実上支配していたか否かが争点となります。
事実上の支配についての認定は、様々な事情を総合的に考慮して判断されるため、必ず認定、ないしは否定されると明言することは難しいといえます。
この点について、5分程度の短時間かつ10数メートル程度の短い距離で、その物から離れた場合に占有を肯定した事例があります(参考事例:https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=51567)。この事例をもとに考えると、Bさんの占有が肯定される可能性もあるといえるでしょう。
そのため、窃盗罪、占有離脱物横領罪のいずれに問われてもおかしくないといえるでしょう。
【窃盗事件を起こしてしまったら】
もしも窃盗事件を起こしてしまい、前科を回避したいと考えた場合、被害者との間で示談交渉を進めることが最も重要になります。
そのため被害者との間で、被害弁償及び示談交渉を行い、可能であれば宥恕条項付きの示談締結を目指します。早期に被害者との示談を成立することができれば、検察官による不起訴処分を受ける可能性を高めうるといえます。
また、起訴され正式裁判となった場合であっても、被害者の方との示談が成立した場合はその事実を裁判所に主張し、これに加えて、被害弁償が済んでいること等を主張して、罰金刑や執行猶予判決の獲得を目指します。
刑事処分の軽減のためには、迅速かつ適切な弁護活動が不可欠ですので、お困りの場合は速やかに刑事事件に強い弁護士にご相談ください。