【報道解説】不正にATMから現金を引き出した事例
他人名義のキャッシュカードを用いて不正にATMから現金を引き出した事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
・事例
静岡県内の80代女性の名義のキャッシュカードを使用して、コンビニエンスストアのATMから現金400万円を盗んだとして、愛知県の高校生が29日、警察に逮捕されました。
窃盗の疑いで逮捕されたのは、愛知県内に住む10代の高校生です。警察によりますと、女子高生は28日、不正に入手した静岡県内の80代女性の名義のキャッシュカードを使用して、同県内のコンビニエンスストアに設置されたATMから現金400万円を盗んだ疑いが持たれています。
この事件を巡っては、80代の女性の家に行政職員を名乗る男らから「健康保険の還付金があります」などと電話があり、その後、女性が自宅を訪れた金融機関の職員を名乗る女にキャッシュカード2枚を手渡す特殊詐欺事件が発生しており、高校生は現金を盗んだ行為について容疑を認めているということです。
(参照事例 https://news.yahoo.co.jp/articles/e02e295f960f35255919c9eee9074b90b6d6805d)
・出し子行為は何罪に?
今回の事案は特殊詐欺事件における、騙し取ったキャッシュカードを用いて金銭を不正に引き出すいわゆる「出し子」について焦点が当てられています。
今回の出し子行為は単体でみると、窃盗罪にあたると考えられます。
なぜなら刑法246条の詐欺罪は「人を欺いて財物を交付させ」る罪であるとされています(出典/e-GOV法令検索)。
しかし、ATMから金銭を引き出す出し子行為は、ATMを操作して金銭を引き出すだけで、人を欺いているわけではありません。
よって、出し子行為自体は、刑法235条に定められる窃盗罪に問われることとなるでしょう。
しかし、今回の特殊詐欺事件の首謀者との共謀があったと認定された場合には、刑法60条に定められる共同正犯の規定が適用され、共犯者として詐欺罪についての罪責を負うことになる可能性があります。
実務上、共謀についての認定は、様々な要素が考慮されるため、共同正犯が成立すると断定はできないものの、仮に詐欺罪の共同正犯が成立した場合、詐欺罪に問われることになるため、窃盗罪の法定刑の「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金刑」ではなく、詐欺罪の法定刑の「10年以下の懲役」と重い刑罰が科される可能性があります。
そのため、弁護士に相談し、適切な対応を取ることが望ましいでしょう。
・出し子行為による窃盗・詐欺事件での弁護活動
窃盗・詐欺事件で逮捕された場合、まず早期の釈放を目指します。
具体的には、逮捕後に勾留手続に進まないよう、逮捕後直ちに、弁護士が逮捕された者と面会して直接事件の内容を聴取することで、今後の事件の見通しを示し、取調べへの対応を検討します。
逮捕は、最長72時間の時間制限があります。
その後、検察官が行う勾留請求により、裁判所が勾留決定を出せば10日間、延長されるとさらに10日間で、被疑者段階で最大23日間も身体拘束が続くことになります。
もしも拘束された場合には日常生活に大きな支障が出る可能性が高いです。
そこでこれを阻止するために、弁護士は、検察官や裁判官に勾留に対する意見書を提出し、勾留を阻止するための主張を行うこともあります。
また、勾留決定に対しての準抗告や勾留取消請求などの釈放を目指した活動を行うこともできます。
同時並行で、被害者との示談交渉を行い、示談を成立させることで、不起訴処分になる可能性を高めることができます。
また、起訴されて裁判になったとしても、示談が成立していることは判決の上で有利な事情となります。
刑事処分の軽減のためには、迅速かつ適切な弁護活動が不可欠ですので、お困りの場合は速やかに刑事事件に強い弁護士にご相談ください。