執行猶予期間経過した後の万引き
執行猶予期間経過した後の万引き
東京都渋谷区に住むAさんは,平成27年7月1日に,窃盗罪(万引き)で「懲役1年 3年間の執行猶予」の判決の言い渡しを受けました。
そして,3年間,何の犯罪を犯すこともなく執行猶予期間を経過したところ,平成30年10月1日に,東京都渋谷区のスーパーで万引きしたとして,警視庁代々木警察署に窃盗罪の容疑で現行犯逮捕されてしまいました。
その後,Aさんは窃盗罪で起訴され,平成31年4月16日に判決の言い渡し期日が迫っています。
Aさんと両親は「Aさんが再度,執行猶予付き判決を受けることができるかどうか」が不安になり,刑事事件に強い弁護士に尋ねてみることにしました。
(フィクションです)
~ はじめに ~
はじめに,Aさんらの疑問に答えるためには,Aさんの執行猶予の期間が経過しているかどうか,執行猶予の効力が切れているのかどうかを確認する必要があります。
なぜなら,執行猶予の期間が経過しているかどうか,効力が切れているかどうかで,適用される条文,要件が異なってくるからです。
そこで,まず,Aさんの執行猶予期間が経過しているのかどうか,詳しく確認することとします。
~ Aさんの執行猶予期間は経過しているのか? ~
そもそも,執行猶予期間はいつからはじまるのか(起算日はいつからなのか)ご存知でしょうか?
これは,実刑の場合も言えることですが,刑の起算日は「裁判の確定の日」からはじまります。
この点,Aさんは,平成27年7月1日に判決(刑の言い渡しの裁判)を受けたとのことですから,上訴などしなければ,「平成27年7月15日(の午前0時)(上訴期間(14日)が経過した日の翌日)」が確定日となります。
それでは,Aさんの執行猶予期間は経過しているのでしょうか?
執行猶予期間の満了日はいつでしょうか?
この点,起算日は平成27年7月15日ですから,執行猶予期間の満了日は「平成30年7月14日(応当日の前日が満了日)」で,「平成30年7月15日(午前0時)」をもって執行猶予期間が経過した,執行猶予の効力が消滅したということになります。
* 前科は残る *
ただし,前科は有罪の裁判を受ければ記録されるものですから,執行猶予期間が経過したとしても前科は消えません。
~ 執行猶予期間が経過した場合の効力 ~
執行猶予期間が経過した場合,刑の言渡しは効力を失います(刑法27条)。
すなわち,執行猶予を受けるためのハードルは,執行猶予中に罪(万引き)を犯した,裁判中であるという方に比べて低くなります。
刑法の規定に従っていれば,Aさんは,執行猶予を受けられる者について定めている刑法25条1項1号の「前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者」に当たりますから,執行猶予を得られる可能性は残ることになります。
しかし,必ず,執行猶予付き判決を受けられるかといえばそうではありません。
なぜなら,前科を有していることは事実ですし,Aさんは執行猶予期間が経過してからほどなくして万引きをしています。
この事実を重く見られれば,実刑の可能性も十分あり得るでしょう。
あとは,その悪い情状を打ち消すだけの有利な情状を裁判でどこまでアピールできるかが鍵となってきます。
また,執行猶予期間が経過した場合の効力としては,欠格事由から外れ,免許等を得られることも挙げられます。
たとえば,医師であれば,「罰金以上の刑に処せられた者」には免許が与えられないことがありますが,執行猶予期間が経過した後は,もはや「罰金以上の刑に処せられた者」とはいえませんから,免許を得る資格を有することになります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,窃盗罪など刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
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(警視庁代々木警察署までの初回接見費用:35,000円)