窃盗未遂罪の成否
窃盗未遂罪の成否
~ケース~
Aさんは、東京都文京区郊外にあるスーパーマーケットに侵入し、店内の商品を盗もうと計画していた。
Aさんは、スーパーマーケットが閉店した後に、入口の鍵を破壊した上で同店に侵入した。
侵入後、Aさんは店内に人がいないかを確かめた上で、高価な商品がないかを探し回っていたところ、高級な米が陳列されているのを発見した。
Aさんは、この高級米を盗もうと思い、米売り場コーナーに向かおうとしたところ、住民の通報を受けて駆け付けた警視庁富坂警察官に発見され、その場で現行犯逮捕されてしまった。
(上記事例はフィクションです)
~窃盗未遂罪~
(窃盗罪)刑法235条 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
(未遂罪)刑法243条 第235条…(中略)…の罪の未遂は、罰する。
窃盗罪は上記のように未遂処罰規定があることから、仮に窃盗が成功しなかった場合であっても、窃盗未遂罪として処罰されることがあります。
窃盗未遂罪が成立する場合、刑が任意的に減軽されることになります(刑法43条本文)。
窃盗未遂罪が成立するためには、「実行の着手」が認められる必要があります。
では、窃盗罪における実行の着手はどの時点においてみとめられるのでしょうか。
実行の着手については、一般的に、他人の財物の占有を侵害する具体的危険が発生する行為を行った時点で認められると考えられています。
このような具体的危険が発生する行為であるかどうかについては、盗む対象となる財物の形状、窃盗行為の態様、犯行の日時・場所といった様々な事情を総合的に考慮して判断されます。
通常の住居等への侵入窃盗の事案において、判例は、侵入した時点では窃盗罪における実行の着手があったとは認められず、遅くとも物色行為のあった時点では着手が認められると判断しています。
他方で、土蔵や金庫室などの財物を保管するだけの場所への侵入窃盗の事案においては、侵入行為に着手があった時点で窃盗罪における実行の着手を認めています。
上記の事例のAさんの行為は、①スーパーマーケットの入口の鍵を壊した上で、②同店に侵入し、③商品を探し回り、④高級米を盗むために米売り場コーナーに向かうというように分解することが出来ます。
閉店後のスーパーマーケットは無人であることが通常であり、侵入してしまえば何者にも邪魔されないと思われます。
他方、スーパーマーケット自体は人の出入りが予定されており、閉店後のスーパーマーケットであっても様々な商品が陳列されている以上、侵入時点では特定の財物の占有を侵害する具体的危険は生じないとも考えられます。
そのように考えた場合、物色行為や盗む対象となる財物に近づいた時点で実行の着手が認められることから、上記の事例における④の時点で実行の着手が認められることになると考えられます。
判例においても、電気店に侵入後現金のある煙草売場へ行きかけた段階で実行の着手を認めたものがあることから、上記の事例でも少なくとも④の段階では実行の着手が認められると考えられます。
なお、仮に実行の着手が認められないとしても、上記の事例のような侵入窃盗の場合、建物への侵入時点で建造物侵入罪が成立することになるため、処罰されないというわけではありません。
このように、窃盗未遂罪が成立するかどうかは問題となっている事例によって異なり、その判断は難しいものになるといえます。
そのため、窃盗罪で逮捕された場合には、できる限り早い段階で弁護士に相談し、適切な弁護活動を行う必要があるといえます。
また、仮に窃盗未遂罪にとどまる事案であっても、窃盗未遂罪における刑の減軽は任意的になされるに過ぎないため、示談等をしたうえで、弁護士が裁判官に対し刑の減軽を認めてもらうよう働きかけることも必要となってきます。
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