万引きで逮捕・窃盗既遂罪が成立?

2020-01-20

万引きで逮捕・窃盗既遂罪が成立?

万引きで逮捕されてしまった場合に窃盗既遂罪が成立するかについて,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。

【事例】
東京都葛飾区に住むAは,自宅近くの食料品店において,人目につかないように気を付けながら,商品を持参した大き目のバッグに入れていった。
Aは,レジで精算をせずに,同店出入り口方向に向かったところ,Aの様子を不審に感じた警備員に呼び止められた。
Aは,警備員室に連れていかれ,防犯カメラとバッグの中身から上記行為が発覚した。
同店からの通報を受けた東京都葛飾警察署の警察官は,Aを窃盗罪の疑いで逮捕した。
Aの家族は,窃盗事件に強いと評判の弁護士に相談することにした(本件は事実をもとにしたフィクションです。)。

~万引き行為における窃盗罪の既遂時期~

本件Aは,V店で商品を万引きしたことによって逮捕されていますが,万引きも刑法上の窃盗罪に当たることは常識といっていいでしょう。

もっとも,Aは同店を出る前に,警備員に呼び止められ,警備員室まで連れていかれています。
Aに窃盗未遂罪が成立することに関しては,常識的感覚からしてもあまり違和感はないかと思います。
しかし,Aは店の外までは出ていないことから,窃盗既遂罪まで成立するといえるのでしょうか。

刑法235条は,「他人の財物窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」としています。

本件では,窃盗罪の客体たるV店の商品が,「他人の財物」であることは明らかであるといえます。
したがってあとは,「窃取」行為が完遂されたか否かによって,窃盗罪の既遂罪が成立するか未遂罪にとどまるかが決まることになります。

ここでいう「窃取」とは,他人が占有する財物を,占有者の意思に反して自己または第三者に移転させることをいい,占有が移転したかどうかは,自己または第三者に事実的支配が移ったかどうかによって判断されることになります。

本件では,Aは,自ら用意していた大き目のバッグの中に,V店の食料品などの商品を入れています。
今回は偶然発見されましたが、通常は容易には発見できない場所に「他人の財物」たる商品を収めています。
したがって、すでに商品の事実的支配はAにあり、占有を移転させたと評価できるでしょう。

したがって,本件Aの行為は「窃取」に該当し,店外に出る前の段階でも窃盗既遂罪が成立するものと考えられます。

なお,未遂罪の成立にとどまる事案では,刑法43条本文により「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者」として,「その刑を減軽することができる」ことになります(刑の任意的減軽)。

~クレプトマニア(窃盗症)について~

本件Aのような万引き犯の中には,薬物中毒者のように窃盗を繰り返してしまう、いわば依存症によって罪を犯してしまう人も存在します。
このような窃盗依存者は窃盗症クレプトマニアなどと呼ばれることがあります。
したがって,弁護士としてはまず窃盗の前科余罪があるか等を,被疑者から十分に聴き取ることになります。

前科余罪の有無によって,窃盗罪のような比較的軽微な犯罪であっても,実刑判決を免れない場合もあり得ます。
しかし仮にそのような場合でも,被疑者がクレプトマニア(窃盗症)の疑いがある場合,刑罰よりも治療が必要であることを主張するなど,捜査段階の早いうちから弁護士として適切な弁護活動を行っていく準備を進めることが重要になってきます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、窃盗事件を含む刑事事件を専門に取り扱う法律事務所です。
窃盗事件(クレプトマニア)で逮捕された方のご家族は、まずはフリーダイヤル(0120-631―881)にお電話ください。
窃盗事件に強い弁護士による,逮捕されてしまった方への接見などの弁護活動をうけたまわっております。

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