会社の金を着服:窃盗と横領
会社の金を着服した場合、窃盗と横領のどちらが成立するかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
福岡県飯塚市にある会社で働くAさんは、会社のお金を着服したとして、会社から着服した分を返還するよう求められています。
会社からは、「返還に応じない場合は、福岡県飯塚警察署に被害届を提出する。」と言われています。
Aさんは、会社から返還するよう求められている金額が着服した金額より多いことが気がかりですが、警察沙汰になることは避けたいと考えています。
Aさんは、自分の行った行為がどのような犯罪に当たるのか、今後どのような流れになるのか分からず不安になったため、刑事事件専門の弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)
会社の金を着服した場合~窃盗or横領~
会社のお金を勝手に自分のものにした場合、どのような罪に問われるのでしょうか。
1.業務上横領罪
業務上横領罪は、刑法253条に次のように規定されています。
業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。
つまり、業務上横領罪は、
①業務上
②自己の占有する他人の物を
③横領したこと
で成立する罪です。
①業務上
本罪の主体は、業務上他人の物を占有する者となります。
ここでいう「業務」というのは、委託を受けて他人の物を占有・保管する事務を反復継続して行う地位のことです。
②自己の占有する他人の物
本罪の客体は、業務と関連して保管・占有する「他人の物」です。
「占有」とは、物に対して事実上または法律上支配力を有する状態をいいます。
③横領
「横領」とは、委託物につき不法領得の意思を実現するすべての行為をいうものと理解されています。(最判昭28・12・25)
不法領得の意思の内容については、争いがありますが、判例によれば、他人の物の占有者が委託の任務に背いてその物について権限がないのに、所有者でなければできないような処分をする意思とされます。(最判昭24・3・8)
不法領得の意思を実現する行為には、法律上の処分・事実上の処分の一切が含まれます。
例えば、売却、贈与、入質、消費、着服、拐帯等です。
さて、事例について検討してみましょう。
Aさんが、会社のお金を着服していたことは事実であるようですが、Aさんが着服したお金を誰が管理していたのかは明らかではありません。
もし、Aさんがそのお金を管理する立場にあったのであれば、「業務上自己の占有する他人の物を横領」したことになり、業務上横領罪が成立することになるでしょう。
2.窃盗罪
他方、Aさんが会社のお金を管理する立場にはなく、会社の金庫から勝手にお金をとった場合には、窃盗罪に問われることになります。
窃盗罪は、
①他人の財物を
②不法領得の意思をもって
③窃取したこと
で成立する罪です。
①他人の財物
本罪の客体は、他人の占有する他人の財物です。
この点、「自己の占有する他人の物」を客体とする業務上横領罪と異なります。
③窃取
「窃取」とは、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己または第三者の占有に移すことをいいます。
Aさんが会社の経理業務を担当している場合、Aさんは会社のお金を管理する立場にありますが、そのような立場にはない場合であれば、Aさんが会社のお金を勝手にとったということになり、他人の占有する他人の財物を自己の占有に移したため、窃盗罪が成立することになります。
会社のお金を着服した場合、着服した人がお金を管理するような立場にあったかどうかで成立する罪も異なります。
いずれにせよ、会社のお金を着服してしまった場合には、早期に被害者である会社に被害弁償を行い、示談を成立させることが事件を穏便に解決するために重要です。
会社のお金を着服したことが会社に発覚し、刑事事件として発展することを回避したい方、刑事事件となってしまったが不起訴で終了させたいとお悩みの方は、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。