盗んだ物が盗品であった場合

2020-07-16

盗んだ物盗品であった場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

東京都町田市の路上に駐車してあったバイクが目に留まったAさんは、かねてより欲しかったこともあり、バイクに近寄ってまじまじと見ていたところ、キーが付いたままであったことから、そのまま乗って自宅まで帰りました。
ある日、警視庁青梅警察署がAさん宅を訪れ、バイクの件で任意出頭してほしいと言われました。
問題のバイクは、東京都青梅市で盗難の被害にあったそうですが、Aさんが発見したのは町田市でした。
どうやら、Aさんが盗んだバイクは盗品だったようです。
Aさんは、盗んだ物盗品の場合にも窃盗罪が成立するのか、刑事事件に強い弁護士に相談しています。
(フィクションです)

盗んだ物が盗品であった場合は何罪が成立する?

まずは、窃盗罪がどのような場合に成立する罪であるのかについて見ていきましょう。

窃盗罪とは

窃盗罪は、①他人の財物を、②不法領得の意思をもって、③窃取した、場合に成立します。

①他人の財物
窃盗罪の客体は、他人の占有する他人の財物です。
自分の物であっても、他人の占有に属していたり、公務所の命令によって他人が看守しているものは、他人の財物とみなされます。
他人の「占有」するとは、人が財物を事実上支配し、管理する状態を意味します。
「占有」は、占有の事実および占有の意思から成り、占有者が財物を事実上支配している状態であり、かつ、財物を事実上支配する意欲や意思がある場合に、認められます。

②不法領得の意思
条文には記載されていませんが、判例は「不法領得の意思」を窃盗罪の構成要件要素としています。
窃盗罪の主観的要件として、①財物が他人の占有に属していること、および、②その占有を排除して財物を自己または第三者の占有に移すことを認識していること(=故意)に加えて、不法領得の意思も必要とされます。
不法領得の意思とは、権利者を排除し、他人の物を自己の所有物として、その経済的用法に従いこれを利用もしくは処分する意思をいいます。
不法領得の意思は、一時使用や毀棄・隠匿目的の場合とを区別する上で重要な要素となります。

③窃取
「窃取」とは、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己または第三者の占有に移すことをいいます。

それでは、盗んだ物盗品であった場合、どのような罪が成立するのでしょうか。
以下、被害者が盗品を取り戻す場合と、第三者が盗品を盗む場合とに分けて説明します。

1.被害者が盗品を取り戻す場合

窃盗の被害者が、盗まれた物をすぐに取り戻す場合には、未だ問題の財物の占有が被害者にあり、犯人側に移っているとは言えないため、取り戻した財物は犯人の財物とはならず、窃盗罪は成立しません。
先述したように、占有は、占有の事実と占有の意思で構成されているため、占有の有無については、占有の事実および占有の意思を総合して判断されます。
判断の際に考慮される要素は、①財物自体の特性、②占有者の支配の意思の強弱、③距離などにより客観的、物理的な支配関係の強弱などです。

一方、財物の占有が完全に移転してしまい、犯人がその占有を平穏に獲得した後は、例え適法に取得した物でなくても、犯人の財物として扱われることになります。
過去の裁判は、物に対する事実上の支配関係が認められる限りその支配が適用と否とに拘らず窃盗罪の保護法益となるものと理解されるため、窃盗犯人から更に賍物を窃取した場合においても窃盗罪が成立するとの立場をとっています。(東京高裁判決昭和29年5月24日)

2.第三者が盗品を盗む場合

上でみたように、盗品であっても、他人(窃盗犯人)が占有する財物となるため、窃盗犯人でも被害者でもない第三者が盗品を盗む場合は、他人の占有にある財物を不法領得の意思をもって窃取したのであれば、窃盗罪が成立することになります。

このように、盗んだ物盗品であっても窃盗罪が成立する可能性があります。

窃盗事件で被疑者・被告人となってしまったのであれば、早期に刑事事件に強い弁護士に相談されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、窃盗事件を含めた刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が窃盗事件を起こし逮捕された方、窃盗事件で取調べを受けている方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。

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