窃盗事件で再度の執行猶予

2021-01-14

窃盗事件で再度の執行猶予を目指す場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
兵庫県高砂市のスーパーマーケットで商品をマイバッグに入れたまま精算せずに店内を出たAさんは、警備員に呼び止められました。
Aさんは、マイバッグに入っている商品が未精算であることを認めています。
通報を受けて駆け付けた兵庫県高砂警察署の警察官は、Aさんを窃盗の疑いで逮捕しました。
警察署での取り調べを受けたAさんは、同日夜に釈放となりましたが、Aさんはこれまでも同様の事件を起こしており、直近では1年ほど前に懲役6月執行猶予3年の有罪判決を言い渡されていました。
執行猶予期間中の再犯ということで、AさんもAさんの家族も今度こそ実刑となるのではないかと心配でたまりません。
Aさんには幼い子供がいるため、何とかもう一度執行猶予とならないかと思い、弁護士に相談しに行くことにしました。
(フィクションです)

再度の執行猶予とは

執行猶予」は、刑を言い渡すにあたって、犯情により一定の期間その執行を猶予し、猶予期間を何事もなく経過したときには、刑罰権の消滅を認める制度のことです。

例えば、あなたが窃盗の罪を犯し、検察官が公判請求したとしましょう。
あなたは、公開の法廷で審理され、裁判官は検察官が主張する起訴事実が提出された証拠によってしっかり証明されたか否かを検討し、あなたに有罪・無罪の判決を言い渡します。
有罪を言い渡す際には、どのような刑を科すかについても言い渡されます。
窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
裁判官は、この範囲内で、あなたに科す刑を決めます。
懲役は、自由刑で、受刑施設に拘禁して、労務作業を行わせるものです。
罰金は、財産刑で、強制的に金銭を徴取するものですが、罰金を納付することができない場合には、労役場に留置され、日当換算して罰金相当を支払終わるまでの期間、労役場で労務に就くことになります。
裁判官が懲役が選択された場合、あなたに対して、1月以上10年以下の範囲内での懲役刑が科されることになりますが、必ずしも有罪判決が言い渡された直後に刑が執行されるとは限りません。
要件を充たし、裁判官が認める場合には、執行猶予付き判決が言い渡されることがあります。
先に述べたように、執行猶予は、一定期間刑の執行を猶予する制度ですので、執行猶予に付されれば、有罪判決を言い渡されたからといって刑に服することになるとは限らないのです。

ただし、執行猶予は、猶予期間中に罪を犯すことなく経過した場合に限り、刑罰権の消滅を認めるものですので、猶予期間中に罪を犯してしまった場合には、執行猶予の言渡しが取消されることになります。
執行猶予の言渡しが取消されるのですから、刑が執行されることになります。

このように、執行猶予期間中に再び罪を犯す場合には、先に言渡された刑に対する執行が猶予されることはなくなり、新たな罪に対して言渡される刑と合わせて刑に服することになります。
しかし、そのような場合であっても、もう一度刑の執行が猶予されるという可能性はあります。
これを「再度の執行猶予」と呼びます。
再度の執行猶予は、次の要件を充たす場合に、裁判官は、刑の全部の執行を猶予することができます。
①前に禁錮以上の刑に処せられ、その執行の猶予中であること、
②1年以下の懲役または禁錮の言渡しをする場合であること、
③情状が特に酌量すべきものであること、
ただし、刑の執行猶予中保護観察に付され、その保護観察期間内に更に罪を犯した場合には、執行を猶予することは許されません。

これらの要件で重要なのは、「③情状が特に酌量すべきものであること」の要件です。
初犯の場合、執行猶予の要件は「情状により」ですので、これと比べると再度の執行猶予の要件がかなり厳しく設定されていることがわかります。
通常、被害者への被害弁償や示談成立が被告人に有利な事情として大きく考慮されますが、これだけでは「情状が特に酌量すべきものである」とは言えません。
この要件が認められるケースは非常に限定されてはいますが、例えば、窃盗症や摂食障害など何らかの精神疾患を患っていること、そして窃盗(万引き)も精神疾患に起因するものだと認められれば、それに対する専門的な治療を受けていることが、再犯防止に取り組んでいるという被告人に有利な事情となり、「事情が特に酌量すべきものである」と判断されるケースもあります。

もちろん、計画性があり被害額も高額な場合には、悪質な万引きと判断され、言渡される刑が1年以下の懲役・禁錮とならないこともあります。

再度の執行猶予は、その要件も厳しく、獲得するには超えなければならないハードルは決して低くはありません。

ご家族が執行猶予期間中に再び罪を犯してしまい対応にお困りの方は、刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
再度の執行猶予について、一度ご相談ください。
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