窃盗と器物損壊
窃盗と器物損壊について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
東京都足立区のスーパーで、商品10点(総額約7000円)を万引きしたとして警視庁竹の塚警察署はAさんを窃盗の疑いで逮捕しました。
Aさんは、調べに対して、「刑務所に入るために罪を犯そうと思った。一番簡単なのが万引きだったから。」と供述しているとのことです。
Aさんは、接見にやってきた弁護士にも同じことを話しており、弁護士からは窃盗ではなく器物損壊に問われる可能性について言われています。
(フィクションです。)
窃盗と器物損壊~窃盗ではなく器物損壊が成立する場合~
他人の物を盗んだ場合、通常、その盗んだ物を使用・利用することを目的としているのですが、そうではなく嫌がらせなどといった物を使用・利用するつもりではなく物を持ち去る場合には、窃盗ではなく器物損壊が成立することがあります。
窃盗罪
窃盗罪は、
①他人の財物を
②不法領得の意思に基づいて
③窃取
することによって成立します。
①他人の財物
他人の財物とは、「他人の占有する財物」のことです。
「占有」の概念については、人が物を実力的に支配する関係であると理解されています。
つまり、物を握時するというのが占有の典型例ですが、それ以外にも、物に対する事実上の支配があれば、窃盗における「占有」が認められます。
事実上の支配は、物を客観的に支配している場合のみならず、物の支配を取り戻そうと思えばいつでも取り戻せる状態をも含みます。
この「物の支配をいつでも取り戻せる状態」に当たるか否かは、支配の事実や占有の意思の観点から判断されます。
③窃取
窃取とは、財物の占有者の意思に反して、その占有を侵害し、目的物を自己または第三者の占有に移すことをいいます。
例えば、他人の飼育する鳥をかごから逃がす行為は、鳥に対する他人の占有を侵害してはいますが、自己または第三者の占有に移転してはおらず、この場合、器物損壊には該当しますが、窃盗には該当しないことになります。
②不法領得の意思
条文上の規定はありませんが、窃盗の成立には、故意の他に不法領得の意思が求められます。
不法領得の意思は、権利者を排除し、他人の物を自己の所有物を同様にその経済的用法に従い、これを利用し又は処分する意思のことです。
器物損壊罪
器物損壊罪は、
①他人の物を
②損壊・傷害
することによって成立します。
①他人の物
器物損壊罪における「他人の物」は、公文書、私用文書、建造物・艦船以外の物であり、動物も含みます。
②損壊・傷害
「損壊」とは、物の効用を害することです。
物理的に破壊することにより効用を害する他、事実上や感情上、使用できなくさせて効用を害することも含まれます。
「傷害」とは、動物を殺傷することをいいます。
Aさんは、他人の所有する物(スーパーマーケットの店長が管理する商品)を勝手に持ち去っています。
Aさんの行為は、「窃盗罪」の「窃取」に該当するほか、持ち去った物を使用できなくさせている(盗まれた商品は、消費されていなくても再度商品棚に並べることが困難である場合があります)点で器物損壊の「損壊」にも該当することになります。
そこで、いづれの罪が成立するのかということが問題となりますが、この2罪を大きな違いは不法領得の意思の有無にあり、この点について検討する必要があるのです。
不法領得の意思は、権利者を排除し、他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い、これを利用し又は処分する意思のことです。
窃盗罪も器物損壊罪も、「権利者を排除する」という点では同じですが、持ち去った物を経済的用法に従って、利用・処分する意思があるか否かという点が異なります。
この点、Aさんは「刑務所に入るため」に万引きを行っており、盗んだ商品を経済的用法に従って利用・処分する意思がなかったのであるから、この場合、窃盗罪ではなく器物損壊罪に問われることになります。
事案によって成立し得る犯罪は異なります。
刑事事件の被疑者となり対応にお困りの方は、刑事事件に強い弁護士に相談されるのがよいでしょう。
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