特殊詐欺事件で窃盗罪
特殊詐欺事件で窃盗罪に問われる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
大阪府高石警察署は、特殊詐欺事件に関与したとして、大学生のAさん(21歳)を窃盗の容疑で逮捕しました。
Aさんは、受け子として大阪府高石市に住むVさん宅を訪れ、キャッシュカードを窃取したということです。
Aさんは容疑を認めており、警察は他にも余罪があるとみて調べています。
(フィクションです。)
詐欺罪と窃盗罪
特殊詐欺事件は、電話やハガキ等で親族や公的機関の職員を名乗り被害者を信じ込ませて、被害者から現金やキャッシュカードを騙し取ったり、ATMで犯人の口座に振り込ませたりする犯罪のことをいいます。
特殊詐欺という名称から、特殊詐欺事件に関与した者には詐欺罪が適用されるように思われがちですが、犯行態様によっては詐欺罪ではなく窃盗罪に問われることがあります。
詐欺罪について
詐欺罪は、人を欺いて、財物を交付させる、あるいは、財産上不法の利益を得、またはこれを他人に得させる犯罪です。
詐欺罪の行為は、「人を欺いて、財物を交付させる」、そして、「人を欺いて、財産上不法の利益を得、またはこれを他人に得させる」です。
詐欺罪の成立には、①欺く行為、②欺く行為によって相手方が錯誤に陥る、③相手方が錯誤に陥った結果、財産的処分行為を行う、④相手方が財産的処分行為を行った結果、行為者に財物の交付が行われる、あるいは行為者が財産上不法の利益を得る、または他人がこれを得る、といったように、①から④までの間に因果関係が認められ、かつ、行為者に行為時においてその故意および不法領得の意思があったことが認められる必要があります。
このように、詐欺罪の本質は、①欺く行為⇒②相手方の錯誤⇒③錯誤に基づく財産的処分行為⇒④財物の交付という行為の流れをとることです。
詐欺罪の成立ポイントとしては、騙された相手が自らの意思で財物ないし財産上の利益の処分を行うことが挙げられます。
財産的処分行為が成立するためには、財産を処分する事実と財産を処分する意思が必要となります。
特殊詐欺事件では、電話で被害者に対して、「口座が犯罪に利用されている。」、「還付金がある。」などと言って騙し、自宅にやって来た人物にキャッシュカードを渡す、といった手口があります。
この場合、騙された被害者は、キャッシュカードを訪問者に渡す意思に基づいてキャッシュカードを渡していますので、詐欺罪における財産的処分行為があったと言え、詐欺罪が成立すると考えられます。
窃盗罪について
それでは、特殊詐欺事件で窃盗罪に問われる場合についてですが、それは、先にも述べた詐欺罪の成立ポイントである財産的処分行為がない場合です。
特殊詐欺事件の手口としては、被害者からキャッシュカードの入った封筒を預かったときに、共犯者にタイミングよく電話をかけさせ、被害者がその場を離れたときに他のカードが入った封筒と入れ替えることによって、被害者からキャッシュカードを取得するというものがあります。
この場合、被害者は自分の意思でキャッシュカードを相手方に渡したわけではありません。
被害者の隙をついて犯人がキャッシュカードをすり替えて入手したのであり、財物の占有者の意思に反して占有を移転させたことになります。
窃盗罪は、他人の占有する財物を「窃取」する犯罪です。
「窃取」とは、財物の占有者の意思に反して、その占有を侵害し、目的物を自己または第三者の占有に移すことをいいます。
そのため、被害者の隙をみてキャッシュカードの入った封筒をすり替える行為は、窃盗罪の窃取にあたります。
詐欺罪も窃盗罪も財物の占有を被害者から自己または第三者に移転させる点で共通しています。
いずれにせよ財産犯ですので、被害者への被害弁償や示談の有無が最終的な処分に大きく影響することになります。
また、ほとんどの特殊詐欺事件は組織犯罪ですので、逮捕後には勾留される可能性が非常に高いでしょう。
勾留の決定と同時に接見禁止に付される可能性もあります。
特殊詐欺事件については近年厳罰化傾向にあり、初犯であっても、事件の内容によっては実刑となることもありますので、特殊詐欺事件でご家族が逮捕された場合には、すぐに弁護士に相談・依頼されることをお勧めします。
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