窃盗(車上ねらい)で逮捕

2021-08-11

窃盗車上狙い)で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
兵庫県姫路市のスーパーマーケットの駐車場に停車していた車から、財布などが入ったカバンを盗んだとして、兵庫県飾磨警察署は、Aを窃盗の容疑で逮捕しました。
同市では今年に入って車上ねらい事件が多発しており、警察はAが他にも同種の事件に関与しているとみています。
Aの両親は、警察からの逮捕の連絡を受け、非常に驚いていますが、今後のどのように対応すべきか分からず困っています。
(フィクションです。)

車上ねらい

車上ねらいは、窃盗の一種で、自動車などの積荷や車内の金品を盗むものをいいます。
自動車に限らず、駐輪した自転車のかごから荷物を盗むケースも車上ねらいに含まれます。

窃盗罪は、刑法235条に次のように規定されています。

他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

■他人の財物■

刑法の客体である「他人の財物」とは、他人の占有する他人の財物を意味します。

まず、「財物」についてですが、これは原則として有体物、つまり、形のある物のことを指します。
ただ、電気については、有体物ではありませんが、刑法245条で「財物」とみなすものと規定されていますので、電気を窃取した場合には窃盗罪が成立します。

他人の財物、つまり、他人の占有する他人の財物であるためには、当該財物を他人が「占有」していることが必要です。
「占有」とは、財物に対する事実上の支配のことをいいます。
占有の存否については、客観的要件である財物に対する支配(占有の事実)と主観的要件である支配の意思(占有の意思)を総合して、社会通念に従い判断されます。
財物を握持している場合は、財物に対する占有は当然に肯定されますし、財物が人の自宅などの支配領域内にある場合についても、その所在を見失っても支配が認められ、占有は肯定されます。
財物が人の支配領域内にない場合については、財物が短時間で現実的支配を及ぼし得る場所的範囲内にあるとき、例えば、外出先で自分のカバンをどこかに置いてきてしまったとしても、すぐに置き忘れたことに気付き、その時に置き忘れた場所からもそう遠くないところにいた場合には、財物の占有が認められる可能性があります。

■窃取■

窃盗罪は、他人の財物を「窃取」する罪ですが、「窃取」とは、他人が占有する財物を、占有者の意思に反して、自己または第三者の占有に移転させることをいいます。
窃盗罪は、占有の移転が必要となりますので、単に占有者の占有から財物を離脱させるにすぎない場合、例えば、他人の鳥かごに入れて飼っている小鳥を逃がす行為は、「窃取」とは言えず、窃盗罪は成立しません。

行為者または第三者が財物の占有を取得したときに、窃盗罪は既遂となります。
占有を取得したかどうかは、財物の大きさ、財物搬出の容易性、占有者の支配の程度などの事情を総合的に勘案して判断されます。

■不法領得の意思■

窃盗罪の成立を肯定するためには、主観的要素として、他人の財物を窃取することの認識(=故意)のほかに、不法領得の意思がなければなりません。
「不法領得の意思」とは、権利者を排除して、他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従い利用、処分する意思のことをいいます。
毀棄・隠匿の意思で行われた場合には不法領得の意思がないため、窃盗罪は成立しません。
また、単に一時使用して返還する意思の場合も、不法領得の意思は否定されます。

窃盗罪には、未遂処罰規定(刑法243条)が設けられており、既遂に至らない場合であっても、未遂罪として犯罪が成立します。
そのため、未遂事件では、実行の着手が認められるか否かが問題となります。
「実行の着手」というのは、構成要件の内容である行為、つまり、犯罪実現についての現実的危険性を含む行為を開始することを意味します。
窃盗罪においては、財物に対する他人の事実上の支配の侵害に密接な行為をしたときに実行の着手が認められると考えられます。
車上ねらいのケースでは、車両内に侵入しようとした行為に及んだ時に、実行の着手があったと認められるでしょう。

車上ねらいで逮捕されたら

車上ねらい逮捕された場合、逮捕後に勾留となる可能性は高いでしょう。
特に、組織的な犯行であるとか、被害金額が大きい、他にも余罪があるなどの場合、罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれがあると認められ、勾留が決定されることが予想されます。
車上ねらいでは、被疑者が複数の車上ねらいを行っているケースが多く、最初に逮捕・勾留された事件とは別に、車上ねらい事件で新たに逮捕・勾留される可能性が高く、身体拘束が長期化することが考えられます。
捜査段階では釈放が困難であっても、起訴後に保釈制度を利用して釈放される可能性はありますので、事前に保釈に向けて準備をしておく必要があるでしょう。

また、財産犯においては、被害者への被害弁償の有無や示談の有無が最終的な結果に大きく影響することになりますので、被害者への被害弁償、示談交渉を行うことは重要です。
ただ、被疑者本人が直接被害者への被害弁償を行うことは事実上難しく、通常は、弁護士を介して行います。
事件が複数に及ぶ場合には、当然、被害弁償の金額も高額となりますが、被害者への被害弁償はきちんと行う必要があります。
窃盗罪は親告罪ではありませんが、捜査段階で被害者への被害弁償や示談が成立している場合には、検察官が起訴しないとする処分を決定することもあります。
事件が複数あり、犯行態様も悪質である場合には、被害弁償・示談の有無にかかわらず起訴することもありますが、それでも被害回復の有無は略式手続や公判請求であっても執行猶予となる可能性を高める重要な要素となることに変わりはありません。

ですので、車上ねらい逮捕された場合には、早期に弁護士に相談・依頼し、被害者への被害弁償や示談交渉を行いましょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が刑事事件・少年事件で逮捕されてお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

Copyright(c) 2018 弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所 All Rights Reserved.