(事例紹介)還付金詐欺事件の「出し子」で窃盗罪に

2022-08-22

(事例紹介)還付金詐欺事件の「出し子」で窃盗罪に

~事例~

介護保険料の還付金が受け取れるかのようなうその電話をかけて、西伯郡の60代の女性におよそ100万円を振り込ませ、ATMから引き出したとして、30代の無職の容疑者が警察に逮捕されました。
(中略)
警察の調べによりますと(中略)容疑者は、去年7月、複数の人物と共謀して、西伯郡に住む60代の女性に役場の職員を装って「介護保険料の通知がある」などと、還付金が受け取れるかのようなうその電話をかけ、指定した口座に、現金およそ100万円を振り込ませて東京都内のATMから引き出したとして、電子計算機使用詐欺と窃盗の疑いが持たれています。
(後略)
(※2022年8月17日17:10NHK NEWS WEB配信記事より引用)

~詐欺事件でも窃盗罪に?~

今回取り上げた事例では、還付金詐欺事件に関わったとして男性が1名、電子計算機使用詐欺罪窃盗罪の容疑で逮捕されているようです。
還付金詐欺とは、名前の通り、あたかも保険料や税金などの還付金が受け取れるかのように偽って、お金を振り込ませてだまし取るという手口の詐欺です。
当然、この還付金詐欺には詐欺罪が成立し得るのですが、騙す対象が人ではなく機械であった場合には、今回取り上げたケースのように、電子計算機使用詐欺罪(刑法第246条の2)という犯罪に問われることもあります。

しかし、今回の事例では、その電子計算機使用詐欺罪だけではなく、窃盗罪も逮捕容疑に含まれているようです。
詐欺行為をして詐欺罪が成立することに不思議はないかもしれませんが、詐欺事件窃盗罪が成立するということはあるのでしょうか。

実は、逮捕容疑の中に窃盗罪が含まれているのは、今回取り上げた事例で逮捕された容疑者が、還付金詐欺事件の被害金をATMから引き出すという行為をしていることによります。
この行為はいわゆる「出し子」と呼ばれる役割が担うことの多い行為であり、還付金詐欺事件だけでなく、オレオレ詐欺事件などの特殊詐欺事件でも見られます。
この「出し子」行為は、他人の口座等から不正にお金を引き出している=他人のお金を不正に盗み取っていると解され、窃盗罪とされることが多いのです。
こうしたことから、「出し子」行為をすることで窃盗罪で検挙されるケースがよく見られるのです。

出し子」は、ATMなどを利用して口座からお金を引き出しますが、その際、ATMなどに設置されている防犯カメラなどに姿が記録されることが多く、検挙されやすい役割であるといえます。
そのため、組織だって詐欺行為をしているようなケースでは、組織の末端の者であったり、事情を詳しく知らない学生アルバイトであったりが「出し子」をしており、とかげのしっぽ切り的に扱われることもあります。
詐欺グループに深く関わっていない者が「出し子」のみをしていたような場合には、「出し子」行為による窃盗罪のみで検挙されることもありますが、まさに詐欺グループの一員として「出し子」行為をしていたというような場合では、いわゆる共犯として窃盗罪だけでなく詐欺罪に問われることもあります。

窃盗事件というと、万引きや置引き、空き巣といった窃盗事件を思い浮かべやすいですが、今回取り上げたような還付金詐欺を含む詐欺事件でも、態様によっては窃盗罪が成立することがあります。
もしかすると、「たかが窃盗罪」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、詐欺事件に関わる窃盗罪は万引きや置引きとは性質が異なり、窃盗事件の中でも悪質性の高いものであると判断されがちです。
特に昨今は、詐欺事件に対して厳しい処分が下される傾向にありますから、たとえ罪名が窃盗罪であり、初犯であったとしても、起訴され刑事裁判にかけられるという可能性も低くありません。
詐欺事件が関わっている場合、全体の被害金額が高額となることもあり、その場合には前科前歴がなくとも実刑判決が下されることも考えられます。
窃盗事件だからと甘く考えずに、早期に弁護士に相談されることをおすすめします。

刑事事件を中心に取り扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、還付金詐欺事件などに関わる出し子をしてしまったというご相談もお受けしています。
その他の窃盗事件についてもご相談いただけますので、窃盗事件に関する刑事手続や弁護活動でお悩みの際は、お気軽にご相談ください。

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