(事例紹介)漁協によるカツオの窃盗事件で有罪判決
(事例紹介)漁協によるカツオの窃盗事件で有罪判決
~事例~
カツオの一連の窃盗事件のうち、おととし8月に焼津市の水産加工会社の元社長らとともにカツオおよそ930キロを盗んだ罪に問われた焼津漁業協同組合の職員に対し、静岡地方裁判所は「立場を悪用して職場内で半ば堂々と行われた大胆かつ計画的な犯行だ」として執行猶予のついた懲役1年6か月の有罪判決を言い渡しました。
焼津漁協で魚の計量を担当していた外港売場の係員、(中略)被告(32)は、おととし8月に焼津市の水産加工会社の元社長らとともに冷凍カツオおよそ930キロ、およそ13万円分を計量せずにトラックに積み込み盗んだとして窃盗の罪に問われました。
12日の判決で静岡地方裁判所の國井恒志裁判長は「立場を悪用して職場内で半ば堂々と行われた大胆かつ計画的な犯行だ。計量証明書を発行する機械を不正に操作するなど犯行に必要不可欠な役割を果たしたといえる」と指摘しました。
その上で、「報酬目的で犯行に加担し、魚市場に対する社会の信頼を傷つけるものであり、厳しい非難を免れない」として懲役1年6か月、執行猶予3年を言い渡しました。
(後略)
(※2022年9月12日18:16NHK NEWS WEB配信記事より引用)
・漁協によるカツオ窃盗事件
今回取り上げた事例は、焼津漁港で水揚げされたカツオを、漁協の職員らが盗んでいたという窃盗事件で、関係者で初めて判決が出た事例です。
この漁協による窃盗事件は、発覚した当初から報道され、世間の注目を集めていました。
今回取り上げた事例の被告人は、水揚げされたカツオを軽量せずにトラックに積み込んで盗んだという窃盗罪の容疑で起訴されていました。
通常、水揚げされた冷凍カツオを業者が競り落とし、その後に漁協がカツオを計量所で計量して冷凍庫へ入庫させるという流れのところ、このカツオ窃盗事件では、その計量所を通らずに一部のカツオをトラックに積み込み水産加工会社に横流ししたということのようです。
窃盗罪では、「他人の」「財物を」「窃取」することがその成立条件となっています。
刑法第235条(窃盗罪)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
窃盗罪の条文にこのカツオ窃盗事件を当てはめてみましょう。
まず、水揚げされ業者に競り落とされたカツオは、当然競り落とした業者のものですから、「他人の」ものといえます。
カツオは漁港で売買されている対象の物であり、カツオには財産的価値があると考えられますから、「財物」でもあります。
そうした「他人の財物」であるカツオを、その持ち主=業者の了解を得ずにトラックに積み込み別の業者に横流しをすることは、カツオを支配管理する権限を勝手に自分たちの手元に置き、かつカツオの持ち主でなければできないような処分をしている=「窃取」していることになります。
こうしたことから、このカツオの横流しは窃盗罪に当たると判断されたのでしょう。
今回のカツオ窃盗事件は、複数人が共謀して起こしている事件でもあるため、どういった立場でどのような役割を果たしたかということも刑罰の重さに関係してくるでしょう。
そういった事情を考慮しなければ、最終的な処分についての見通しを立てることも難しいですから、事件の当事者となった段階で、一度弁護士に相談してみることをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、様々な態様の窃盗事件について、ご相談・ご依頼を承っています。
窃盗事件にお困りの際は、お気軽にお問い合わせください。