クレプトマニアと窃盗罪(大阪市此花区)

2019-04-20

クレプトマニアと窃盗罪(大阪市此花区)

A子さんは,大阪市此花区にあるスーパーマーケットで食料品等30点(販売価格8000円相当)を万引きしたところを保安員に見つかり逮捕されてしまいました。
その後,Aさんの身柄は大阪府此花警察署に引き渡されましたが,その日のうちに釈放されました。
実は,A子さんは,同じ万引きの窃盗前科を1犯,窃盗前歴を3回有しています。
A子さんとその夫は,今後のことが不安になって刑事事件に強い弁護士に無料法律相談を申込みました。
相談を受けた弁護士は,A子さんがクレプトマニアではないかと疑いはじめました。
(フィクションです)

~ 万引きは窃盗罪 ~

万引きは刑法の窃盗罪に当たります。

刑法235条
他人の財物を窃取した者は,窃盗の罪とし,10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

万引きであっても初犯であるなど要件を満たせば微罪処分で刑事手続が終了する場合もあります。
しかし,2度目,3度目と万引きを繰り返した場合は,もはや微罪処分で終わることはないでしょう。
始めは罰金刑で済むこともあるかもしれませんが,それでも万引きを繰り返す場合は懲役刑を科され,最悪の場合,実刑となることもあります。
運よく執行猶予が付いた場合でも,その執行猶予期間中に再度万引き等の犯罪を犯せば,言渡された刑と執行を猶予された刑とを併せて服役しなければならなくなる場合もあります。

* 微罪処分 *
微罪処分とは,警察が事件を検察庁を送致せず,被疑者への厳重注意,訓戒等で終了させる手続きのことをいいます。
微罪処分とするか否かは,予め定められた基準に基づいて警察が判断します。
微罪処分となれば,起訴,不起訴などの刑事処分を受けることはありません。
また,刑罰を科せられることもありませんから前科が付くこともありません(ただし,前歴は付きます)。

* 前科・前歴 *
「前科」は刑事裁判を受け,有罪と認定され,その裁判で言い渡された刑が確定した場合につきます。
他方,「前歴」は,裁判まではいかなくても,何らかの犯罪で被疑者として取り扱われた場合に警察官が記録として残すものです。
例えば,不起訴処分(起訴猶予)を受けた場合,裁判を受ける必要はありませんから「前科」が付くことはありませんが,被疑者として扱われたことは事実ですから「前歴」としては残ります。
「前科」「前歴」は似ているようですが,「前歴」は,過去に「〇〇が〇〇の罪で被疑者として扱われた」という事実を証明するにすぎません。

~ クレプトマニアと窃盗罪 ~

クレプトマニアは窃盗癖とも呼ばれています。
窃盗(万引き)衝動に伴う精神的な緊張感およびその状態からの解放感に依存し,繰り返し窃盗行為に及んでしまうという精神疾患の一種です。
アメリカの精神医学会の「DMS-5」という診断基準では,以下の5項目を基準にクレプトマニアか否かを判断しているようです。

・個人的に用いるのでもなく,またはその金銭的価値のためでもなく,物を盗もうとする衝動に抵抗できなくなることが繰り返される。
・窃盗におよぶ直前の緊張の高まり。
・窃盗を犯すときの快感,満足,または解放感。
・盗みは怒りまたは報復を表現するためのものでもなく,妄想または幻覚に反応したものでもない。
・盗みは,行為障害,躁病エピソード,または反社会性人格障害ではうまく説明されない。
(※上記は5項目は1つの目安ではあり,絶対的なものではありません。)

クレプトマニアは精神疾患の一種です。
精神疾患の一種であることから,クレプトマニア=責任無能力=無罪(窃盗罪に問われない)と誤解されている方も中にはおられますが,それは早計です。
いくらクレプトマニアであっても,物事の善し悪しを判断できる能力,かつ,この能力に従って行動できる能力がある(=責任能力がある)とされれば,窃盗罪に問われ得ることになりますから注意が必要です。

~ クレプトマニアの弁護活動 ~

しかしながら,クレプトマニアの方を窃盗罪に問い,刑罰を科すだけでは根本的な解決にはならないと考えられます。
確かに,刑務所内でも更生に受けたプログラムが組まれていますが,やはり刑務所内で行われることですので「治療」というよりかはむしろ「矯正・教育」の要素が強いかと思います。
したがって,クレプトマニアの方の弁護活動では,刑務所ではなく,「社会内更生の必要性・相当性」を検察官や裁判官に主張していく必要があります。

「社会内更生の必要性」を強調するためには,専門の治療機関を受診し,その後も継続して治療を受ける必要性を主張する必要があります。「社会内更生の相当性」を強調するためには,本人の意欲はもちろんのこと,周囲の適切なサポートがあり,本人が継続して治療機関を受診し続けていける環境が整っていることを主張する必要があるでしょう。

過去の裁判例では,クレプトマニアの方の事案で,検察官の求刑よりも軽い刑で終わったという事案が多数あります。
「自分はクレプトマニアだから」「前科,前歴を多数持っているから刑務所行きだ」などといって諦めず,まずは専門の弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は,窃盗罪をはじめとする刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
刑事事件・少年事件でお困りの方は,まずは,お気軽に0120-631-881までお電話ください。
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大阪府此花警察署までの初回接見費用:3万5,300円)

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