福岡県うきは市でバッグのねこばば

2019-06-19

福岡県うきは市でバッグのねこばば

【事件】
Aさんは,福岡県うきは市内を走行中の電車内で隣の座席に座っていたVさんが網棚にバッグを置いているのを見つけました。
その後,Vさんがバッグを置き忘れたまま降車し電車が発車したのを良いことに,Aさんはこのバッグをねこばばしました。
後日,Vさんが被害届を出したのをきっかけに,駅構内の監視カメラの映像などからAさんは福岡県うきは警察署で取調べを受けることになりました。
(フィクションです)

【遺失物等横領罪】

ねこばばをしてしまった際に問われうる犯罪の1つとして,遺失物横領罪が挙げられます。
遺失物等横領罪は,遺失物,漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した場合に成立する犯罪です(刑法第254条)。
遺失物横領罪の法定刑は,1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料となっています。

遺失物横領罪は,典型的には,ねこばば行為が処罰の対象となっています。
遺失物とはいわゆる落とし物のことで,占有者(行為者ではない者)の意思によらずにその占有を離れ,未だ誰の占有にも属さない物のことです。
漂流物とは,遺失物のうちでも特に水面や水中に存在する物のことをいいます。
占有とは,財物が人の事実上または法律上の支配下にある状態を指します。

また,条文中には書かれていませんが,遺失物横領罪の成立には不法領得の意思も必要となります。
なぜなら,この意思がなくても処罰可能とするならば,例えば警察に届けるつもりで落とし物を拾った場合でも処罰されることになりかねないからです。
不法領得の意思とは,権利者を排除し,他人の物を自己の所有物と同様に利用しまたは処分する意思ないし目的のことをいいます。

遺失物等横領罪の成否を考える上では,遺失物の所有権者が権利者ということになります。

今回の事件では,Aさんは本来のバッグの所有者であるVさんの意思に反してこのバッグを自分のものとしており,一見すると遺失物等横領罪が成立しそうに考えられます。
しかし,ねこばば行為でも窃盗罪に問われる場合があることに注意が必要です。

【窃盗罪と遺失物等横領罪】

窃盗罪は,不法領得の意思をもって他人の財物を窃取した場合に成立する犯罪です(刑法第235条)。
窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

過去の事例では,被告人が,バスに乗るために行列していた被害者がバスを待つ間に置き忘れていた高級カメラを持ち去ったケースについて,カメラは「なお被害者の実力的支配のうちにあったもので,未だ同人の占有を離脱したものとは認められ」ず,窃盗罪が成立するとした判例(最判昭和32・11・8刑集11巻12号3061頁)があります。
この事件では,被害者はカメラを身辺の左約30センチメートルのところに置き忘れ,行列の移動に伴って先に進みはじめて5分後(距離にして約19.6メートル)に気が付いて引き返したが,既に被告人により持ち去られていたという状況でした。

つまり,今回の事件においてもバッグが未だVさんの占有下にあるということになれば,Aさんはねこばば行為について遺失物等横領罪ではなく窃盗罪に問われる可能性が高くなるといえます。

法定刑は窃盗罪に比べて占有離脱物等横領罪の方が圧倒的に軽く,弁護活動の方針としては,ねこばばがあったことが事実であるとして,占有離脱物等横領罪に止まることを主張する活動も考えられます。
こうした主張は専門的知識に基づき行われる必要がありますから,お早めに弁護士に相談されることがおすすめです。
福岡県うきは市ねこばばの事実で窃盗罪あるいは遺失物等横領罪の被疑者となってしまった方,福岡県警うきは警察署で取調べを受けることになってしまった方は,刑事事件に強い弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談下さい。

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