ひったくり事件:窃盗と強盗

2020-06-25

ひったくり事件が窃盗となる場合、強盗となる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

Aさんは、深夜、兵庫県尼崎市の路上を歩いていたVさんの背後から原動機付自転車で近付き、追い抜きざまにVさんが肘にかけていたバッグを引っ張って盗ろうとしました。
しかし、Vさんがバッグ離さず路上に転倒したため、Aさんはバッグを持ったVさんを数メートルにわたって引っ張り続けた結果、Vさんはバッグを離しました。
Aさんはバッグを奪ってその場から逃走しました。
後日、兵庫県尼崎東警察署は、ひったくり事件の被疑者としてAさんを逮捕しました。
(フィクションです。)

ひったくり事件

相手方の背後から近づき、相手方の不意をついて金品を奪う「ひったくり」は、手っ取り早く金品を奪う手段として、その認知件数は徐々に下がっているものの、現在も相当数発生しています。
ひったくりの多くは、「窃盗」に該当しますが、その行為は、多かれ少なかれ相手方に対する接触を伴うため、接触の程度や具体的な状況によっては、「窃盗」にとどまらず、「強盗」に該当する場合もあります。

まずは、窃盗罪について、どのような場合に成立し得るのかについて説明します。

(1)窃盗罪

窃盗罪は、
①他人の財物を
②不法領得の意思をもって
③窃取した
ことで成立します。

「不法領得の意思」というのは、「権利者を排除し他人の物を自己の所有物としてその経済的用法に従いこれを利用もしくは処分する意思」のことをいいます。(大判大4・5・21)
また、「窃取」とは、占有者の意思に反して財物に対する占有者の占有を排除し、目的物を自己または第三者の占有に移すことをいいます。(最決昭31・7・3)
窃取の手段や方法は問いませんので、こっそりであっても、ひったくりのようにあからさまであっても構いません。

次に、強盗罪についてみていきましょう。

(2)強盗罪

強盗罪は、
(1項)①暴行または脅迫を用いて
    ②他人の財物を
    ③強取したこと
(2項)①暴行または脅迫を用いて
    ②財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させたこと
により成立する犯罪です。

実行行為の手段である「暴行・脅迫」は、相手方の反抗を抑圧するにたりる程度に強い暴行・脅迫であることが必要となります。(最判昭24・2・8)
反抗を抑圧する程度に強い暴行・脅迫の判断基準は、社会通念上一般に相手方の反抗を抑圧するに足りる程度か否かを客観的に判断されるものと解されます。(最判昭23・11・18)
これを判断するための具体的な要素には、次のものが挙げられます。
・犯行の時刻、場所その他の周囲の状況
・凶器使用の有無、凶器の形状性質、凶器の用い方などの犯行の手段や方法
・犯人、相手方の性別、年齢、体力など

「強取」とは、暴行・脅迫を用いて相手方の反抗を抑圧し、その意思によらずに財物を自己または第三者の占有に移す行為をいいます。
「強取」といえるためには、暴行・脅迫による反抗抑圧と財物奪取との間に因果関係が必要となります。
窃盗と同じく、不法領得の意思は判例上認められた要件です。

窃盗と強盗との線引き

ひったくり事件において、窃盗が成立するか、強盗が成立するかは、ひったくりの状況が、相手方の反抗を抑圧するに足りる暴行に至っているか否かがポイントです。
ひったくり事件は、大きく分けると、
①相手方の隙をついて、追い抜きざまやすれ違いざまに、持っているバッグなどを引っ張って奪うケース、と
②相手方が金品を奪われないように抵抗したため、金品を奪うためにさらにバッグなどを引っ張り続けるなどの暴行を加えるケース
とがあります。
①のようなケースでは、相手方に対し一定の接触はありますが、相手方の反抗を抑圧する程度の暴行を加えたとは言えず、窃盗にとどまります。
他方、②では、金品を奪うために更なる暴行を加えていることから、相手方の反抗を抑圧する程度の暴行を加えたと評価されることがあります。
上の事例でも、Aさんは、抵抗してバッグを離さずにいたため転倒し、抵抗できずにいた状態のVさんをバッグもろとも数メートルにわたって引っ張り続け、最終的にVさんにバッグを離させ、バッグを奪いました。
そのため、Aさんは、Vさんの反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えて、Vさんの反抗を抑圧してバッグを奪っていると評価され、窃盗ではなく強盗罪に問われる可能性があります。

窃盗罪と強盗罪は、その法定刑も大きく異なりますので、いづれの罪が成立するかによって最終的な処分も違ってくるでしょう。
いずれにせよ、ひったくり事件では、被害に遭った方がいらっしゃいますので、被害者への被害弁償や示談の有無が最終的な処分にも影響することになります。
そのため、刑事事件に精通する被害者との示談に豊富な経験を持つ弁護士に被害者との示談交渉を含めた弁護活動を依頼するのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、窃盗強盗を含めた刑事事件専門の法律事務所です。
ご家族がひったくり事件を起こし対応にお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。

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