(事例紹介)住居侵入罪と窃盗未遂罪で緊急逮捕 緊急逮捕とは?

2022-12-19

(事例紹介)住居侵入罪と窃盗未遂罪で緊急逮捕 緊急逮捕とは?

~事例~

(略)
住居侵入と窃盗未遂の疑いで緊急逮捕されたのは、(略)会社員の男です。
警察によりますと、男は12日午後1時35分から午後1時40分の間、17歳の男子高校生が住む仙台市宮城野区のアパートの部屋に侵入し、財布を盗もうとした疑いが持たれています。
(略)
男は男子高校生に見つかると車で逃走しましたが、車のナンバーや特徴を高校生が覚えていたためその後、警察に逮捕されました。
警察の調べに対し、男は「間違いありません」と容疑を認めているということです。
(※2022年12月13日0:48YAHOO!JAPANニュース配信記事より引用)

~緊急逮捕とは?~

今回の事例では、男性が住居侵入罪窃盗未遂罪の容疑で緊急逮捕されたと報道されています。
一般に「逮捕」というと「犯罪をした人が警察に捕まるものだ」というイメージがあると思いますが、逮捕にもいくつか種類があり、緊急逮捕もその1つです。
よくイメージされる「逮捕」は、刑事ドラマなどで捜査官が令状をもってやってきて逮捕するもの(いわゆる「通常逮捕」)や、今まさに犯罪をした人を逮捕する「現行犯逮捕」でしょう。
では、「緊急逮捕」とはどういった逮捕なのでしょうか。

刑事訴訟法第210条第1項
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕することができる。
この場合には、直ちに裁判官の逮捕状を求める手続をしなければならない。
逮捕状が発せられないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない。

通常、逮捕は裁判所の発布する令状をもって行われなければいけません。
先ほど例として挙げたような、令状を示して逮捕するような逮捕が「通常逮捕」と呼ばれるのも、こうした逮捕の形式が原則とされていることによります。
しかし、今まさに犯罪をしている人=現行犯については、冤罪の可能性も少なく緊急性も高いといった事情から、令状なしの逮捕=「現行犯逮捕」が認められています。

こうした中、「緊急逮捕」は刑事訴訟法第210条第1項の条文にある通り、一定の条件を満たした場合、令状なしでの逮捕が許される逮捕ですが、逮捕の後に速やかに令状を請求しなければならず、その際に令状が発布されない場合には被疑者が釈放されるという決まりになっています。
つまり、「緊急逮捕」は事後的に令状を請求する仕組みの逮捕ということです。

この緊急逮捕には、先ほど触れたように条件が定められています。
条件なしに緊急逮捕できるようになってしまえば、令状なしの逮捕が濫用されることになってしまい、権力の濫用に繋がってしまうためです。
緊急逮捕が許されるのは、「死刑又は無期若しくは長期3年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合」かつ、「急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないとき」でなければいけません。

今回の事例にあてはめてみましょう。
今回緊急逮捕された男性にかけられている容疑は、住居侵入罪窃盗未遂罪です。
それぞれの法定刑は、「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」(刑法第130条、住居侵入罪)、「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」(刑法第235条、窃盗罪)となっており、「長期3年以上の懲役…にあたる罪」であるといえます。
報道によると、住居侵入罪窃盗未遂罪の被害者が車のナンバーや特徴などを覚えていたことから男性につながっており、こうした情報が男性が「罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由」であると判断されたと考えられます。
そして、状況的に「急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができない」ものであったと考えられ、緊急逮捕に至ったのでしょう。

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