自転車の一時使用で窃盗罪?

2020-02-29

自転車の一時使用で窃盗罪?

自転車を一時的に借りて窃盗罪で取調べを受けた場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ケース~
Aさんは、京都市中京区内の道路上に無施錠で駐輪してあったV所有の自転車に乗り、目的地で用事を済ませた後、元の場所に5分ほどで戻ってきました。
するとVが待ち構えており、「お前が俺のチャリ盗ったのか。待っていたんだ。それじゃあ、警察行こうか」と告げ、通報されてしまいました。
Aさんは駆け付けた京都府中京警察署警察官から任意同行を求められ、警察署に行くことになりました。
取調べでは、「自分の物にするつもりはなく、一時的に借りたつもりだった。現に乗ったのは5分間ほどだし、元の場所に返そうともした」と強く訴えました。
Aさんは帰宅を許されましたが、また出頭しなければなりません。
今後はどうなるのでしょうか。(フィクションです)

~窃盗罪が成立するには~

窃盗罪が成立するには、他人の財物をひそかに持ち去るだけでなく、その際に不法領得の意思を有していることが必要です。

判例によると、不法領得の意思
とは、①権利者を排除して、他人の物を自己の所有物とし、②その経済的用法に従い、利用若しくは処分する意思をいいます(大審院大正4年5月21日判決、最高裁昭和26年7月13日判決)。

簡単に言うと、①は、ちょっと借りるくらいなら持ち主が使えなくなるわけではないから(権利者を排除まではしていないから)、犯罪とまで言わなくてもいいという話です。
②は、物を勝手に使ったのではなく壊した場合には、その物本来の使い方(経済的用法)をしておらず、窃盗罪ではなく器物損壊罪を問題とすべきということです。

今回のケースの場合、Aさんは自転車で移動するという自転車本来の使い方をしているので、②は認められます。

問題は①です。
Vの自転車を元の場所に返しているので、Vの自転車を持ち出した時点においても、返還するつもりだったのでしょう。
また、乗っていた時間も5分間と短く、もともと駐輪していた場所からそれほど遠くへ行くつもりがなかったものと思われます。
したがって①の意思がないと判断される可能性があります。

①の意思がなければ、窃盗罪は成立しないのです。

なお、①に意思が認められるか否かは、物の値段や保管方法などによっても変わってくるので、すぐに返すつもりであれば①が絶対に認められないというわけではないので注意が必要です。
たとえば高価なものであればそもそも勝手に使うことは容認されず、一瞬使った時点で①が認められる可能性があります。

~犯罪が成立しないことを捜査機関やVに訴える~

【捜査機関に対して】
窃盗罪が成立しないと判断されれば、今後捜査されることもなくなりますし、罪に問われることもありません。
弁護士を通じて、Aさんに不法領得の意思がなかった旨を主張し、捜査機関が納得すれば、事件は解決します。

事件化してしまった場合であっても、弁護士に依頼しておけば、検察官などに対して、説得的に不法領得の意思がなかった旨を主張する手助けをしてもらえます。
この主張が認められれば、嫌疑不十分または嫌疑なしとして不起訴処分となる可能性があります。

または、検察官が犯罪自体は成立するとしても、被害が軽微であるとして、起訴猶予として不起訴処分にする可能性があります。

検察官が不起訴処分を行えば、裁判にかけられず、前科も付かずに刑事手続きが終了します。
上記の活動が功を奏せず、起訴されてしまった場合においても、予め弁護士を選任しておくことにより、無罪判決の獲得に向けた弁護活動を行ってもらえます。

【被害者Vに対して】
弁護士からVに対し、窃盗罪が成立しないことを説明し、納得してもらうことも必要です。
納得してもらわなければ、何らかの嫌がらせを受けるなど、新たなトラブルの種にもなりかねません。
窃盗罪が成立しないという主張をしていても、Vに迷惑をかけたという理由で、相当な金銭を支払い示談をすることも考えられます。
示談は、不起訴処分となる可能性を上げる効果もあります。

この場合においても、弁護士を窓口として交渉することにより、Aさんの負担を減らすことができますし、不当に不利な、または意味の無い示談を成立させてしまうリスクを回避することができます。

いずれにしても、不法領得の意思の有無について争う場合は、法律の専門家である弁護士の力添えが役に立ちます。
ぜひ、弁護士と相談することをご検討ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
窃盗の疑いをかけられたが、不法領得の意思を争い無罪を主張したいといった場合には、ぜひご相談ください。

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