情報屋への情報提供で窃盗罪

2020-10-01

情報屋への情報提供を行うことで窃盗罪に問われる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

神奈川県逗子警察署は、神奈川県逗子市にある民家に侵入し、現金や貴金属類などを盗み取ったとして、住居侵入および窃盗の疑いで、3人の男を逮捕しました。
3人の供述から、犯行前に情報屋であるXから、多額の現金が置いてある家の情報提供を受けたことが分かり、逗子警察署はXも逮捕しました。
Xは、容疑を認めており、今回の事件についての情報はYから提供された旨を述べており、逗子警察署は、Yについて窃盗の容疑で逮捕しました。
(フィクションです)

他人の物を勝手にとる行為は「窃盗」という犯罪です。
実際に、他人の物を窃取した人だけが「窃盗」の罪に問われるというわけではありません。
何らかの形で協力して犯罪を成し遂げた場合には、実際に窃盗行為を行ってはいない協力者が「共犯」として「窃盗」の罪責を負う可能性があります。

「共犯」というのは、複数人が協力して犯罪を実現する場合のことをいいます。
刑法は、この「共犯」を「共同正犯」、「教唆犯」、「幇助犯」の3つに分類して規定しています。

共同正犯

2人以上の者が共同して犯罪を実行した場合を「共同正犯」と呼び、この場合、共同して犯罪を実行した者(共同正犯者)も、自ら犯罪を行う「正犯」として扱われます。
「共同正犯」が成立するためには、2人以上の者の間に、①共同実行の意思、及び②共同実行の事実が存在していることが必要となります。

①共同実行の意思
「共同実行の意思」というのは、各行為者が相互に他人の行為を利用し補充し合って構成要件を実現する意思のことをいいます。
この意思は、行為者相互間に存在していなければなりません。

②共同実行の事実
「共同実行の事実」とは、2人以上の行為者が共同してある犯罪を実行することをいいます。
ここでいう「共同して」とは、共同者全員が他人の行為を利用し補充し合って犯罪を実行することを意味します。
この点、各人がそれぞれ基本的構成要件に該当する行為を実現することが求められるのか、あるいは、2人以上の者が一定の犯罪について共謀し、そのうちのある者が実行に出た場合、直接実行行為を行わなかった共謀者も共同正犯となるのかが問題となります。

これについて、「共謀共同正犯」という考え方があります。
「共謀共同正犯」というのは、2人以上の者がある犯罪の実行を共謀し、共謀者のうちある者が共謀にかかる犯罪を実行した場合に、共謀に参加したすべての物について共同正犯としての罪責が認められる共犯形態のことです。
判例上、共謀共同正犯の成立要件は、①共謀の存在、②共謀に基づいて、共謀者の全部又は一部の者が実行行為を行ったこと、③共謀者が正犯意思を有すること、です。

①共謀
「共謀」とは、謀議行為自体ではなく、共謀者の「実行行為時における犯罪の共同遂行の意思」です。
共謀形成の過程は、数人が順番に連絡し合う形であってもよいと解されます。
また、共謀は明示的に行われる必要はなく、暗黙で行われても足りるとされます。

②共謀に基づいて
共謀共同正犯が成立するためには、全部又は一部の者による実行が「共謀に基づく」ものでなければなりません。

③正犯意思
共謀共同正犯は、正犯として扱われるため、共謀者はそれぞれ正犯意思が必要であるとされます。
ここでいう正犯意思とは、他人の犯行の認識をいうのではなく、共同犯行の認識のことです。
正犯意思の認定をする際には、①共謀者と実行行為者との関係、②犯行の動機、③共謀者と実行行為者間との意思疎通行為の経過・態様・積極性、④実行行為以外の行為に加担している場合は、その内容、⑤犯行前後の行為(分け前分与や実行行為者からの事後報告など)、⑥犯罪の性質・内容などが考慮されます。

さて、Yについて考えてみたとき、共同正犯に当たるのでしょうか。
Yは、ターゲットとなる被害者の情報情報屋であるXに提供しており、実際に被害者の家に侵入し窃盗を行ったのは他の3人ですので、Yさんは窃盗(及び住居侵入)を直接実行していません。
そうであれば、Yについて共謀共同正犯については成立するのでしょうか。
その点を検討する際には、上述の成立要件の有無を検討することになります。
Yは、Xらとの間に犯罪の共同遂行の意思があったのか否か、Yは正犯意思を有していたか否か、が問題となりますが、YはXらの仲間であり、Yに担う役割は犯罪実現のためには欠かせない、しっかり盗品の分け前をもらった(又はもらう約束をしていた)という場合であれば、Yについて共謀共同正犯が成立する可能性があると考えられるでしょう。

共謀共同正犯が成立する場合には、正犯として処罰されることになります。
共謀共同正犯が成立を争う場合には、刑事事件に強い弁護士に相談し弁護を依頼されるのがよいでしょう。

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