キャッシュカードすり替え窃盗事件

2019-09-22

キャッシュカードすり替え窃盗事件

福岡県北九州市在住の一人暮らしの高齢者Vさんに対し、銀行職員を名乗る男から電話があり、「あなたの預金口座が犯罪に利用されているおそれがあります。職員がご自宅に伺いますのでキャッシュカードを確認させてください。」と告げられた。
その後、Vさん宅に銀行職員を名乗るAという男が訪れ、AはVさんに対し、「ご自宅でキャッシュカードを厳重に保管してもらう必要があります。暗証番号を書いたメモと一緒にこの封筒に入れておいてください。」と言って用意していた封筒を手渡した。
VさんはAの言葉を信用し、受け取った封筒にVさん名義の口座のキャッシュカードと暗証番号を書いたメモを入れた。
その後、AはVさんが目を離した隙に、Aがあらかじめ用意していたダミーの封筒とVさんのキャッシュカード入りの封筒をすり替え、Vさんのキャッシュカード等が入った封筒をそのまま持ち去った。

その後、Vからの相談を受けた福岡県八幡西警察署は捜査を開始し、Aは逮捕されることとなった。
(上記の事例はフィクションです)

~特殊詐欺の手口~

上記事例のように、銀行の職員や警察官を装って、キャッシュカードが犯罪に利用されているとうそをいい、隙を見て別のカードにすり替えるという手口の事件が多発しています。
このようなキャッシュカードをすり替えて騙し取るという手口は、オレオレ詐欺などの特殊詐欺の一環として行われることが多く、特殊詐欺グループによる組織的な犯罪であることが多いです。
そのため、特殊詐欺グループと関わりを持ってしまった未成年の少年などが加害者となるケースも多いです

~キャッシュカードすり替えで成立する犯罪~

刑法235条(窃盗罪) 
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

刑法246条(詐欺罪)
1項 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。

詐欺罪が成立するためには、人を欺く行為があったといえる必要があり、人を欺く行為は、これによって被害者が錯誤に陥り、財物の交付に至らせるような性質のものでなければなりません。

上記の事例のAは、銀行職員を装い預金口座が犯罪に利用されているおそれがあるという嘘をついています。
Vさんが一人暮らしの高齢者であることを踏まえると、Aの行為はVが錯誤に陥る程度の嘘をつく行為であるとはいえます。

もっとも、Aによる嘘をつく行為は、あくまでVさんにキャッシュカードと暗証番号の書かれたメモを封筒に入れさせるためのものであり、その封筒の交付をVさんから受けるためのものではありません。
そのため、Aの行為は財物の交付に向けられているとはいえず、詐欺罪における欺く行為にはあたりません。

他方、窃盗罪における「窃取」とは、財物の占有者の意思に反して、その占有を侵害し、自己又は第三者の占有に移すことをいいます。

上記事例では、Vさんは自宅で保管するために自分のキャッシュカードと暗証番号の書かれたメモを封筒に入れています。
そのため、封筒をすり替えてVさんのキャッシュカードと暗証番号の書かれたメモを持ち去ったAの行為は、Vさんの意思に反して、Vさんの占有を侵害しキャッシュカード等の占有を自己に移す行為といえ、「窃取」にあたります。

このように、上記のような手口は特殊詐欺の一環として行われていますが、詐欺罪ではなく、窃盗罪が成立する可能性が高いといえます。
実際の同種事案においても、窃盗罪で逮捕されているケースが多いです。

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